ユーロ2024でのスペインの強さを林陵平が解説「ゆっくり攻めてプレスを使い分ける」 (2ページ目)

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【スペインがゆっくり攻める意味】

 試合は立ち上がりからバチバチで、球際の攻防も、攻守の切り替えのところもそうですが、両チームともクオリティが非常に高かかったです。ユーロ2024はレベルが高いですし、「面白いな!」っていうのを実感しました。

 開始2分で、早速ニコが1対1を仕掛けてジョバンニ・ディ・ロレンツをかわしてクロス。ペドリがヘディングシュートを放つなど、立ち上がりからスペインの攻勢が目立ちました。

 スペインのイタリアの守備に対しての狙いを説明します。基本的にイタリアは、自陣では4-1-4-1でブロックを組んでいました。1トップのジャンルカ・スカマッカがスペインのふたりのセンターバック(CB)を見るので、どちらかのCBが前にボールを持ち運ぶシーンが多かったです。

 アンカーのロドリに対しては、スカマッカがパスコースを消す役割をしていたんですけど、そうなった時はファビアン・ルイスがロドリの脇に下りてきてDFラインからボールを引き出しました。一方ペドリは、ジョルジーニョの脇のところから2ライン間にどんどん顔を出す役割が多かったと思います。

 あとはニコとヤマルの両ウイングが、大外に張ったところからの質的優位を見せたんですけど、右のヤマルに対しては右SBのダニエル・カルバハルがサポート。左はニコが中に入った時は、左SBのマルク・ククレジャが外側の高い位置に、ニコが外に張っているなら、ククレジャが少し内側を取るなど、SBとウイングの関係が魅力的でした。

 スペインがいいのは、ボールを保持した時にゆっくり前進することによって、チーム全体のポジションバランスが整っていることです。その状況で敵陣に相手を押し込んで閉じ込めているので、ボールをロストした時の即時奪回のスピードが速いです。

 個々の攻守の切り替えは大事なんですけど、それ以上にポジションバランスがいい。ゆっくり攻めて全体のバランスが崩れてないので、守備時にもボールに近い選手たちがすぐに反応できるようになっています。長いボールが多くなると、どうしても自分たちの陣形が間延びしてしまうんですけど、スペインはチーム全体でバランスよく動いていることで、よりカウンタープレスがかかりやすいんですね。

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