ユーロ2024でのスペインの強さを林陵平が解説「ゆっくり攻めてプレスを使い分ける」 (4ページ目)
【後半選手交代もうまくいかなかったイタリア】
イタリアは後半の頭から、ダビデ・フラッテージとジョルジーニョを下げて、アンドレア・カンビアーゾ、ブライアン・クリスタンテを入れてきました。
クリスタンテはアンカーに入るかと思ったんですけど、バレッラをアンカーに下げて、クリスタンテを前に入れましたね。このバレッラとクリスタンテの位置が、なぜこうだったのかなと少し疑問でした。
というのも、クスタンテは前に出てスペインの2CBにプレッシャーをかけたあと、後ろに戻ってくる作業があったんですが、それならバレッラのほうが運動量があって戻るスピードは速い。クリステンテもアンカーにいたほうが防波堤になれるし、ビルドアップの出口になれる選手でした。だから、逆でもよかったのではないかなと。
実際バレッラとクリスタンテは後半あまりうまくいかず、特にバレッラは消えてしまいましたね。でも、やっぱりスパレッティ監督ですから、何らかの狙いはあったと思うんですが。これが監督の難しいところで......。
スペインは、ククレジャがスーパーでした。特に、スペインが押し込んだあとイタリアがカウンターに出るという時、ここで中に出て潰すことが多かったです。
自分のいたスペースを空けて飛び出していくので、中に絞ってかわされると左後ろの広大なスペースを使われることになります。それでも潰しにいくタイミングの取り方がすばらしかった。スペインはアレックス・グリマルドという、今季レバークーゼンで活躍したいい選手もいるんですけど、今のスペイン代表では、ククレジャは外せない選手ですね。
スペインが後半よりよくなった部分は、ペドリです。スペインの狙いはボールを動かしながらウイングを使う部分もあるんですけど、加えてとにかくペドリにどれだけボールを預けられるかでした。やはりペドリにボールが入った瞬間が攻撃のスピードアップの合図でしたし、前半と比べて後半は立ち上がりから、ボールをよく引き出すようになりました。
イタリアの守備は、前半みんなが頑張っていたんですけど、多分スペインの攻撃がボディーブローのように効いてきた。どうしても一人ひとりの守る範囲は狭くなってきたなかで、ペドリにボールが入るようになったと感じます。
後半はずっとスペインペースで、イタリアもカウンターを繰り出すことがあまりできませんでした。特にペドリがボールに触る、ヤマルとニコが1対1を仕掛け、カットインからシュートもあって、あわやゴールという場面もたくさん作りました。
イタリアGKのジャンルイジ・ドンナルンマのシュートストップ能力がなかったら、何点入っていたかわからない。スーパーセーブを何度か見せていましたね。
というわけで、前半は拮抗していましたが、90分間通してはスペインの強さを感じるゲームでした。チームとして攻守4局面がすべて整備されていて、グループ戦術のなかに個人の質が乗っかっています。
スペインは優勝候補ですね。強いです!
著者プロフィール
林 陵平 (はやし・りょうへい)
1986年9月8日生まれ。東京都八王子市出身。ジュニアからユースまで、東京ヴェルディの育成組織でプレーし、明治大学を経て2009年に東京ヴェルディ入り。レフティの大型FWとして活躍した。10年に柏レイソルに移籍し、11年にJ1優勝を経験。その後、モンテディオ山形、水戸ホーリーホック、再び東京Ⅴ、FC町田ゼルビア、ザスパクサツ群馬でプレーし、20年に現役を引退。Jリーグ通算300試合出場67得点。現役時代から海外サッカー通として知られ、メディア出演多数。現在はプレミアリーグからJリーグまで幅広く解説を務め、トップランナーとして活躍中。
【画像】スペイン、イタリアほか ユーロ2024注目チームのフォーメーション
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