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ユーロ2024でフランスとオランダが激突 エムバペ、ガクポの両チーム左サイドのエースがカギ (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【見逃せない両サイドの攻防】

 ダンフリースは推進力、ボールの運搬力という点で欧州屈指の右サイドバック(SB)だ。所属のインテルではウイングバックとしてもプレーする。前方にウイングが構えていなくても単独で右サイドをカバーする力がある。ポーランドがサイドアタッカー各1人の5バックで臨んできたことも幸いした。右ウイングのシモンズが内寄りに構えても、守備面では大きな心配はなかった。

 だが、攻撃面になるとシモンズは居場所を失った。中途半端なポジション取りになった。左ウイングのガクポが圧倒的なプレーを見せていただけに、その左右非対称ぶりは目に余った。後半17分、シモンズに代わりドニエル・マレン(ドルトムント)が、さらに後半36分、戦術的交代でジェレミー・フリンポン(レバークーゼン)が右ウイングに入ると問題は解消されたが、次戦のフランス戦はどうするのか。

 シモンズのポジション取りを見て連想したのはイタリアの左ウイング、ロレンツォ・ペッレグリーニ(ローマ)だ。マイボールに転じると内側に入る点で、オランダの右ウイングと共通する。片側のSBを極端に上げる半3バック的なスタイルもそっくりだ。ちなみにシリアと戦った先日の日本代表も同種のサッカーだった。

 そのイタリアについて、筆者は、ラミン・ヤマル(バルセロナ)という強力な右ウイングを擁するスペイン戦ではその左右非対称が穴になる可能性があると述べたが、フランスと対戦するオランダにもまったく同じ心配がある。エムバペという強烈な左ウイングに対し、現状の備えでは危ない。エムバペを下支えする左SBテオ・エルナンデス(ミラン)の、頭脳優秀なプレーぶりも見逃すことはできない。

 オランダの右はダンフリースひとりで大丈夫か。ロナルド・クーマン監督はポーランド戦同様、3バックと4バックを調整する可変式で臨むのか。あるいは違う方法論を選択するのか。

 逆にフランスは、オランダの左ウイング、ガクポをどう止めるかがカギになる。身長193センチのガクポは、「長身選手はボール操作がうまくない」という概念があるが、ガクポは今大会の参加選手のなかでも、一番の例外である。

 いずれにしても両サイドの攻防から目は離せない。日本代表にとっても貴重なサンプルとなる試合になるだろう。

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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