「シント・トロイデンは21番目のJ1クラブ」 立石敬之CEOが『0円移籍』させない理由 (2ページ目)

  • 中田 徹●取材・文 text by Nakata Toru

 シント・トロイデンは日本でイベント、サッカースクール、交流パーティを開き、シーズン末には選手たちと一緒に各企業を回っている。シント・トロイデンはJリーグのクラブとまったく同じことをしているんです。しかも、私には(在籍した大分トリニータ、FC東京、アビスパ福岡で)その経験がある。私は『シント・トロイデンは21番目のJ1リーグクラブ』だと思っています」

── 『21番目のJ1リーグクラブ』という言葉には、アイデンティティやフィロソフィーなど様々な意味が含まれていますよね?

「そうですね。特にマーケティングの手法はJリーグのやり方と全く同じ。シント・トロイデンにはふたつの部隊があって、ベルギーではローカルに合ったマーケティングをしています。公式ホームページはオランダ語と日本語でまったく違うものを作り、こっちでは地元の選手を推し、日本語版では日本人選手情報以外にスポンサー契約の報告なども載せています」

── 日本人選手のことを両方のホームページで推してしまうということは?

「それはもうないですね。だから、ふたつのホームページでまったく異なるアプローチが生まれる。今、メディアチームはバート・スタス(ブランドマネジャー)をチーフとして、『ハスペンゴー』という日本で言うところの江戸とか豊後みたいな地域性を全面に打ち出しています」

── 立石さんがCEOに就くまで、シント・トロイデンは選手を買うことも売ることもほとんどしないクラブでした。2010年にGKシモン・ミニョレ(現クラブ・ブルージュ)を250万ユーロでサンダーランドに、2011年にDFデニス・オドイ(現クラブ・ブルージュ)を150万ユーロでアンデルレヒトに売ったのが目立つくらいです。

「だから、いきなり冨安健洋があの金額(推定700万ユーロ+ボーナス)でボローニャに売れて、地元の人たちもビックリ(笑)。10数年前はまだ、ベルギー人選手自体の評価がヨーロッパの市場でそれほど高くなかったのかもしれません。

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