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久保建英、暴力的守備が増加するなかでチームを離脱 日本代表に招集する意味とは (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 そして何より、2月14日のチャンピオンズリーグ(CL)ラウンド16、パリ・サンジェルマン(PSG)戦のファーストレグ出場は絶望的である。奇跡的に間に合っても、大会を戦い抜き、長い移動をして、ほぼ中一日でベストプレーができるほど甘くはない。重大なケガもあり得る。

 もちろん、ラ・レアルに招集の拒否権はない。久保も「シーズン中の開催は残念」「(アジアカップを戦う)義務がある」「行ったら代表のために戦う」と、苦渋を滲ませながらも気持ちを切り替えるしかない。

 ただ、久保が18歳で海を渡ってレアル・マドリードと契約し、勝負を積み重ねてきたのは、CLでPSG戦のようなゲームを戦うためだったのではないか。もし自身の活躍で勝ち抜くことができれば、世界的なインパクトを与えることになる。それは"日本サッカー興隆の証明"になるはずだ。

 率直に言って、世界的にはアジアカップは記録が打電されるぐらい。ほとんどの日本人はアフリカ王者を知らないのと同じことだ。かつてアジア王者、コンフェデレーションズカップ出場は栄えある称号だったが、時代は変わった。今や欧州の最前線で日本人選手が華々しい勝負を繰り広げているのだ。

 森保一監督は、久保の招集に関して再考すべきではないか。最低でも、準決勝前後にはラ・レアルへ戻すべきである。元旦のタイ戦でも明らかなように、欧州のトッププレーヤーが集まれば、誰が采配を振っても相当の力量差が出る。久保、冨安健洋、三笘薫などが不在で戴冠することで、指揮官としての価値も上げられるはずだ。

 もし久保がPSG戦出場を逃すようなことがあれば、それは日本サッカーにとっての損失と言える。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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