ブッフォン「なぜエコノミー? 安いからさ」 現役を引退した「史上最高のGK」の素顔 (2ページ目)
【誰かの力になりたいと思っている】
彼はいつも、自分はただ運がいいだけの人間で、だからこそ他人を助けなくてはいけないと思っていた。自分を神のように思っているズラタン・イブラヒモビッチとは真逆だ。誰にでも気さくに接し、笑って肩を叩き、いつも相手に知られることなく、誰かの力になりたいと思っている。
彼がどんな人間であるのかを理解してもらうために、僭越ながら、私の個人的なジジとの思い出を披露したいと思う。私が『ガゼッタ・デロ・スポルト』紙のユベントス番記者として毎日チームに張りつき、選手たちのことはほぼ何でも知っていた頃の話だ。
練習が休みのある月曜日、私はジジが個人的にマルタ島に行くという情報を掴んだ。デスクに連絡すると、すぐに後を追えと言う。こうしてトリノからマルタに飛ぶ唯一の飛行機の上で私はジジと顔を突き合わせることになった。
「ここでいったい何しているんだ?」
驚きと、多少怒りの混じった声で彼は私に尋ねてきた。私は冗談交じりにこう答えた。
「マルタ島の君の彼女はどんな顔をしているのか、見てみたいと思ってね」
するとジジは破顔し、私の近くの席に腰をかけた。ここである事実が判明した。私が予約していた席はビジネスクラスだったが、ジジの席はエコノミーだったのだ。それを指摘すると彼は笑ってこう説明した。
「小児がんの子どもたちを助けているマルタ島の団体から、『子どもたちはみな俺のファンだからぜひ会いに来てほしい』って言われたんだ。なぜエコノミーなのか? そりゃ安いからさ。子どもたちのためにチャリティーに行くのに、お金をかけるわけにはいかないだろう」
マルタに着いたジジを、人々は大きな喜びで迎えた。子どもたちとの試合ではもちろんジジはゴールマウスに立ち、誤った方向にわざと飛んではゴールを許していた。ジジからゴールを奪った子どもは歓喜の声を上げ、それを見ていた彼らの親たちは涙を流していた。その夜、トリノに戻る機上のジジは、まるでチャンピオンズリーグのカップを手にしているみたいに満足げだった。
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