上田綺世に小野伸二から激励も フェイエノールトの「特別な存在」を目指す (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

【ヒメネスと上田は共存できる】

 そして2023年8月、上田綺世が3人目の日本人選手としてスタディオン・フェイエノールトに現れた。セルクル・ブルージュにフェイエノールトが払う1000万ユーロ(約15億円/ボーナス含む)は両クラブ史上最高額。背番号はストライカーの証「9」だ。

「いや、僕は18番がよかった。僕は父親に憧れてサッカーを始めたんです。その背番号です」

 高校時代に彼が「僕のサッカーの原点は父です」と語っていたことを思い出す。

 しかし、フェイエノールトで「18」をつけるのはCBゲルノト・トラウナー。チームキャプテンの背番号を"新入り"が横取りするわけにはいかない。それでも欧州のビッグクラブで栄えある9番をつけることに、ご家族も喜んでいるのでは?

「9番はいい番号ですし、伝統ある番号。僕の家族はひとケタの番号をもらえて、すごく喜んでいました」

 セルクル・ブルージュでつけた36は、憧れの18の倍数だ。

「僕がプロにデビューした時の番号が36番だったので。そしてセルクルに18番がいたので、つけられなくて......。18以外の番号は、僕にとってはほぼ変わらない。それだったら36番でいいかなと。ただ、背中の番号がすべてではない。9番もすばらしい番号だと思います」

 フェイエノールトのエースストライカーはメキシコ代表のFWサンティアゴ・ヒメネス。アルネ・スロット監督の4-3-3にストライカーのポジションはひとつしかない。オランダ全国紙のフェイエノールト番記者は「上田が控えなのはもったいない。なにか共存する策はないだろうか?」と頭を捻っていた。

 セルクル・ブルージュ時代の上田は9.5番でプレーしたり、2シャドーの一角を務めたりした。「だから上田ならトマソンのように、セカンドストライカーとしてプレーできる。だけどもう1オプション、ほしいな」と番記者は言う。

 フェイエノールトの右ウイングは、ストライカータイプのFWアリレザ・ジャハンバフシュ。ゴールへの嗅覚に秀でるイラン代表の30歳は、AZ時代の2017-18シーズンには21ゴールを叩き出して得点王に輝いている。フェイエノールトのプレー原則なら、上田は右ウイングでもストライカーとして輝けるのではないだろうか。

「これはいいアイデアだ。ヒメネスと上田は共存できるぞ」と番記者の目がキラリと光る。

「ただ問題は、上田が右ウイングを引き受けるかどうかだ」

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