マンチェスター・シティをCL初制覇に導いた17本のパス 「らしさ」貫いた攻撃的サッカーの勝利 (3ページ目)
【「3か4」対「3か5」の戦い】
インテルの頑張りで試合が最後まで盛り上がった。しかし別の見方もできる。マンチェスター・シティが時間稼ぎはもちろん、最後まで守りに入らずキチンと攻めたことを見逃すことはできない。少々危なっかしい終わり方だったが、きれいな終わり方だった。アップアップになりながら逃げきったわけではない。非マリーシア的な、とでも言える正攻法なサッカーを貫きながら、タイムアップの笛を聞いた。1.5倍対4.5倍の関係をそこに見ることができた。初優勝ながら、連覇を狙えそうな終わり方だった。
チャンピオンズリーグ初制覇に沸くマンチェスター・シティの選手たちこの記事に関連する写真を見る 攻撃的サッカー対守備的サッカー。価値観の対立軸が鮮明な両チームが決勝で相まみえ、攻撃的サッカーが勝利を収めた。ひと頃に比べ、守備的サッカーがじわりと台頭し始めたなかでもたらされたこの結果には大きな意味がある。
両軍ともマイボールの時は3バックを布くが、相手ボールに転じるとマンチェスター・シティは4バックとなり、インテルは5バックになる。
今回のCL決勝は「3か4」対「3か5」の戦いでもあった。日本に浸透している価値観はインテル的な「3か5」だ。森保ジャパンがそうであるように3バックと言えばその大半が守備的なスタイルになるである。マンチェスター・シティ的な、もっと言えばクライフ的であり、かつてのバルサ的、アヤックス的な3バックを見ることは滅多にない。
2002年の日韓共催W杯で、フース・ヒディンク率いる韓国はまさに「3か4」だった。3-3-3-1と4-2-3-1を、右SB(ソン・ジョングク)の上げ下げで調整していた。典型的な「3か5」のトルシエジャパンとは一戦を画していた。
CL決勝は日本と欧州との差を痛感した一戦でもあった。これを機に、長年変われずにいるその旧態依然とした価値観にピリオドが打たれることを願わずにはいられない。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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