マンチェスター・シティをCL初制覇に導いた17本のパス 「らしさ」貫いた攻撃的サッカーの勝利 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AP/AFLO

【ゴールへの近道「マイナスの折り返し」】

 マヌエル・アカンジが送った16本目のパスに反応したのは右ウイングのベルナルド・シウバで、ライン際の最深部でボールを受けると17本目のパスをマイナスに折り返した。インテルCBフランチェスコ・アチェルビに当たり、コースが変わったこともマンチェスター・シティにとって幸いした。

 ゴール正面に転がっていったボールに合わせたのはロドリ。右隅に冷静に蹴り込み先制点とした。それがそのまま決勝点になったわけだが、見逃せないのはラストパスがライン際からのマイナスの折り返しだった点だ。

 マンチェスター・シティの監督、ジュゼップ・グアルディオラと言えば、現役時代は、クライフ・サッカーの申し子として知られた。バルセロナの監督だったヨハン・クライフが当時、最もこだわっていた点がこの両ウイングからのマイナスの折り返しだった。

「それが決まった瞬間こそが、得点の期待が最も高まる瞬間だ。バルサの攻撃的サッカーのシンボルである」と、口角泡を飛ばして筆者に力説したものである。

 Jリーグの発足と時は重なる。それから30年。サッカーの競技性は格段に進歩した。しかし、当時も現在も最深部からのマイナスの折り返しこそが得点への近道であることに変わりはない。そのことを再認識させてくれたロドリの決勝ゴールだった。最深部までいかにボールを運ぶか。ゴールから逆算したようなその計17本に及ぶパス回しだった。

 結果は1-0。だがインテルも最大限、可能な限り頑張った。大きなチャンスが訪れたのは2回。1度目は先制点を奪われた直後の後半25分だった。左ウイングバック、フェデリコ・ディマルコのヘディングシュートがクロスバーを叩く。さらにディマルコはその跳ね返りに再び反応。ヘディングシュートを試みるも、自軍FWロメル・ルカクに当たってしまう不運に見舞われた。

 2度目は最終盤の後半43分。ブロゾビッチのクロスを受けたMFロビン・ゴセンスがファーポストで折り返すと、ルカクがそれを真ん中で合わせたシーンだ。GKエデルソンの好守に阻まれたが、もう幾ばくかの運に恵まれれば、試合は延長にもつれ込んでいたに違いない。

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