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上田綺世が感じた日本とベルギーのサッカー文化の大きな違い「ボールを持つことが絶対にいいとされているわけではない」 (5ページ目)

  • 鈴木智貴●取材・文 text by Suzuki Toshiki
  • スエイシナオヨシ●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi

 文化が違うというのは、たとえば僕の主観になりますが、日本のサッカー文化では川崎フロンターレのようなポゼッションで何十パーセントも相手を上回り、パスも何百本もつないで、なおかつ勝つというのがよい──とされている気がして。『それがすばらしいサッカーだ』と。

 でも、サッカーの本質は試合に勝ち続けることだから。こっち(ベルギー)や特に今のチームではより合理的に、相手ゴールに迫る回数を増やし、相手に自陣ゴール前に入られる回数を少なくして、相手陣地でプレーすることが求められます。

『細かくボールをつなぐのはリスクだよね』『だからみんなでスペースを作る動きをして、なるべく相手のコートで、相手にうしろ向きでプレーさせて、より相手ゴールに迫るプレーを続けよう』という考え。そういう優先順位ですね。

 だから、綺麗(なサッカー)とか泥臭い(サッカー)の感覚もない。プレッシャーをガンガンかけて、前でボールを奪って、パスを出して、得点を決める。それを続けたら相手は点が取れないし、僕らはより多くのチャンスを得られる......という本質です。そこの文化がまったく異なっています。

 日本では『弱いチームはボールを持てない。だからプレッシャーをかけて走るチームになる』もしくは『強いチームはボールをつなぐテクニックがあるから、ゆっくり試合を進めてラクに勝つ』みたい風潮が見られますが、そこがまったく違う。ベルギーではボールを持つことが絶対にいいとされているわけでもないですし」

 日本とベルギーにおけるサッカー文化の違いを、上田は静謐に、そしてよどみなく話し始めた。続くインタビュー後編では、指揮官との関係性、最前線以外のポジション、そしてシーズン終盤に見せたゴールラッシュの背景について語ってくれた。

◆上田綺世・後編>>監督が「綺世を見ろ」→チームで個性を確立した


【profile】
上田綺世(うえだ・あやせ)
1998年8月28日生まれ、茨城県水戸市出身。中学時代は鹿島アントラーズノルテに所属するも、ユースに昇格できず鹿島学園高へ進学。2019年、法政大サッカー部を退部して鹿島に加入。同年7月、浦和レッズ戦でプロデビューを果たす。2022年7月、ベルギーのサークル・ブルージュへ完全移籍。日本代表はU-20から各年代で呼ばれ、2019年6月のチリ戦でA代表デビュー。2022年カタールW杯メンバーに選ばれる。ポジション=FW。身長182cm、体重76kg。

著者プロフィール

  • 鈴木智貴

    鈴木智貴 (すずき・としき)

    1981年生まれ、静岡県出身。2010年からドイツ在住。DFB公認B級(UEFA−Bレベル)指導者ライセンス保有。これまでに左右アキレス腱断裂と左膝半月板損傷を経験しており、手術歴"だけ"はプロ選手並み。

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