マンチェスター・シティ、遅攻の理想が凝縮されたサッカーでバイエルンに大勝 CL初制覇が見えてきた (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

【効いていたシティの両ウイング】

 バイエルンが敗れるパターンをそこに見た気がした。

 その6分後にもハーラントのゴールで、マンチェスター・シティは、事実上の決勝戦と言われたこの大一番を3-0で折り返すことになった。ベスト4進出を8~9割、手中に収めたと言っても言い過ぎではない。

 利いていたのはやはり両ウイングで、マン・オブ・ザ・マッチはベルナルド・シウバになる。もし両翼の深い位置でボールを奪われても、自軍ゴールまでは遠い。真ん中で奪われた場合より逆モーションに陥らず、反転速攻を受けにくい。マンチェスター・シティの遅攻には安定感があった。

 パスを引っかけられ逆襲を食らう。ショートカウンターを浴びる。これこそがマンチェスター・シティの負けパターンだと踏んでいたが、そうしたシーンはほぼゼロだった。

 真ん中で奪われるシーンは、バイエルンのほうが目立った。ロドリが挙げた先制点のシーンがそれだ。攻撃の始点はバイエルンの左ウイング、サネが中央に入り込み、四方を囲まれた瞬間だった。

 サネは先述のとおり、中央寄りにポジションを取った。サイドで構えていては孤立するからだ。左サイドバック(SB)、アルフォンソ・デイヴィスが、ベルナルド・シウバのウイングプレーに翻弄され、高い位置を取れなくなっていたこととそれは深い関係がある。

 サネは終盤2度、マンチェスター・シティゴールに鋭いシュートを飛ばしている。GKエデルソンの好守が光ったシーンでもあったが、正面からいまにもシュートを放ちそうな体勢から放たれた一撃だったので、守りやすいシュートであったことも事実だ。目線が振られる格好になるマンチェスター・シティの、両サイドを使った立体感のある攻撃とは一線を画していた。

 カウンターを浴びにくい遅攻。この日のマンチェスター・シティは、まさしく遅攻の理想が凝縮されたサッカーを展開した。これを最後まで続けることができればCL初優勝の可能性は高い。次戦以降が楽しみになってきた。

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プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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