バイエルンは新戦術「ペナ幅攻撃」でCL優勝なるか パリ・サンジェルマン戦で怖いのはエムバペのカウンター
第5回:バイエルン
バイエルンのジャマル・ムシアラ。狭いスペースでもうまくプレーできるこの記事に関連する写真を見る
【大外を使わない攻撃】
2019-20シーズンにチャンピオンズリーグ(CL)優勝を果たしたが、続く2シーズンは準々決勝で敗退。ブンデスリーガでは10連覇と一強状態が続くバイエルンといえども、CL優勝はそう簡単ではない。
大エースだったロベルト・レバンドフスキがバルセロナへ移籍し、リバプールからサディオ・マネを獲得。しかし、レバンドフスキとマネはタイプが違うので、センターフォワードの穴を埋めたのは、マキシム・シュポ=モティングだ。
33歳のストライカーはブンデスリーガでキャリアを積み、ストーク・シティ、パリ・サンジェルマンでプレーしたのちにバイエルンへ加入。パリSGでは控え選手扱いだったが、今季のバイエルンでは1トップとしてレギュラーポジションを確保。長身のポストプレーヤーとしてボールの収まりがよく、空中戦の強さや冷静なフィニッシュで貢献している。
シュポ=モティング、トーマス・ミュラー、レオン・ゴレツカが空中戦に強いので、ハイクロスは依然としてバイエルンの強みなのだが、基本的に攻撃はペナルティーエリアの幅で行なう。これはユリアン・ナーゲルスマン監督になってからの戦術的な特徴と言えるだろう。
フィールドを縦に5つに区切る「5レーン」で言えば、大外の左右2レーンをあまり積極的には使わない。前記のとおりハイクロスに強い選手もいるので、全くそこからのクロスがないわけではないが、外のレーンはラストパスを送るための場所ではなく、たんにボールを落ち着ける場所になっている。
そこから中央へボールを移動させるか、サイドでも中央寄りに入っていく。タッチライン際は背後から守備者が来る心配はないので、ボールを落ち着けて展開を図る場所として重要ではあるが、かつてのように外からハイクロスを繰り返すという攻め方ではなくなっている。
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著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。