バイエルンは新戦術「ペナ幅攻撃」でCL優勝なるか パリ・サンジェルマン戦で怖いのはエムバペのカウンター (2ページ目)

  • 西部謙司●文 Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

【ペナルティーエリアの中へボールと人を送り込む】

 攻め込んだ時のバイエルンは、ペナルティーエリア幅に4、5人の選手を配置するので圧が強い。このエリアでボールを失った場合でも直ちにプレスできるので、ボールの奪回も速い。これも狭く攻撃する利点であるが、得点のために無駄を削ぎ落した合理的なプレーを志向している。得点の80%はペナルティーエリア内のシュートから生まれている。つまり、ペナルティーエリアの中へボールと人を送り込むための、ペナ幅の配置になっているわけだ。

 パリSGとのCLラウンド16第1レグでも、バイエルンの人海戦術は決勝点をもたらしていた。アルフォンソ・デイビスのクロスを逆サイドのキングスレイ・コマンがボレーで決めているのだが、ファーサイドへのクロスに対してパリSGはマークにつききれなかった。それだけバイエルンのゴール前の人数が多いからだ。

 ゴール近くに投入する人数の多さは、守備側の混乱を引き起こす。しかし、それ以外にバイエルンがこの攻め方の特性を生かしきれているかという疑問は少し残る。

 ペナルティーエリアの幅に多くの人数を集中させるということは、それだけ使えるスペースが狭くなる。その狭いスペースでうまくプレーできる選手が揃っていれば、狭く攻撃するメリットはある。ところが、明確にそれが得意という選手がジャマル・ムシアラしかいないのだ。

 カタールW杯で日本代表に敗れたドイツ代表とこの点は似ている。ドイツはボールを支配し、サイドに展開の起点を作りながらも中央のペナ幅に多くの選手を配置して圧力をかけていた。だが、その狭いスペースを生かせるのはムシアラしかおらず、ミドルシュートかハイクロスが主な攻め手だった。唯一、ムシアラだけが独特の横へいなすドリブルでボックス内に進入していて、日本にとっては最大の脅威だったのだが、そうした攻撃は散発的だった。

 パリSGとの第1レグでも、狭いスペースが得意な選手は相手にいた。リオネル・メッシとネイマールだ。もし、バイエルンにメッシとネイマールがいれば狭い攻撃はもっと威力があっただろう。ムシアラだけでは効果は限定的だった。負傷から復帰したマネが加われば、状況は変わってくるかもしれないが。

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