三笘薫爆発の要因に欠かせない「ブライトンの戦術」。水沼貴史は「日本代表でも参考になる」

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

水沼貴史のプレミアリーグ解説 前編/三笘薫活躍の要因

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ブライトンで爆発中の三笘薫のプレーを、毎週楽しみにしている人は多いだろう。日本で無双していたプレーを、なぜ世界最高峰の舞台でも出せるようになったのか。プレミアリーグ中継の解説を務めている水沼貴史さんに分析してもらった。

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【プレーの選択肢が豊富で、判断も的確で速い】

 三笘薫がプレミアリーグという世界最高峰の舞台で、これほどセンセーショナルな活躍をしているのは驚きでもあるし、それと同時に「やっぱりできるよな」と思うのも正直なところだ。彼が活躍できている要因は、あれだけのレベル、強度のなかでもやれるプレーの選択肢が豊富なことにある。

毎週楽しみでワクワクする三笘薫のプレー毎週楽しみでワクワクする三笘薫のプレーこの記事に関連する写真を見る 長い距離のドリブルもできるし、狭いスペースで仕掛けるドリブルもできる。ライン際で縦に勝負もできるし、カットインから中へ入ってワンツーやクロスだけでなく、シュートを狙うこともできる。

 これが縦だけ、カットインだけとなったら相手にも簡単に読まれてしまうけれど、多くの選択肢を持ちながら状況によって巧みに使い分けができて、その判断も的確で速いからプレミアリーグでも通用しているのだろう。

 しかも1対1の突破力は、今やプレミアリーグのなかでも屈指だ。あのレベルのDFたちを相手にドリブルでぶっちぎってしまうのは、なかなか想像がつかなかった人も多いのではないだろうか。それが1度や2度ではなく、当たり前のようにやってのけてしまう。

 自分の間合いやリズムで抜いていける選手は多いが、三笘の場合は止まった状態からでも相手を振りきれてしまう。流れのなかでもいけるし、止まってからもいける。相手のDFからすると、「どうやって止めればいいんだよ」と相当に迷わせているはず。そうして迷わせた時点で、もう三笘の勝ちなのだ。

 プレミアリーグに挑戦するにあたって、フィジカル面の弱さを懸念されることもあったが、まったく問題ない。そもそも相手に詰めさせず、フィジカル勝負をさせないので、問題にならないのだ。

 先日、中村憲剛さんと話した時に「三笘が活躍してくれなければ困る」ということを言っていた。彼が日本人選手のスタンダードをプレミアリーグの舞台で示してくれたことは、のちにヨーロッパに挑戦する日本人にとって非常に大きい。日本人選手への期待は大きくなり、その分、入口も広くなるはずだからだ。

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