三笘薫爆発の要因に欠かせない「ブライトンの戦術」。水沼貴史は「日本代表でも参考になる」 (2ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

【ブライトンのスタイルが三笘を生かしている】

 プレミアリーグはほかのリーグから移籍してきた選手にとって、試合のテンポの速さや非常に高い強度に慣れるのに時間がかかると言われる。しかし、三笘は半年も要さなかった。それは彼の適応能力の高さはもちろんだが、ブライトンというチームも要因としては大きい。

 ブライトンはリーグ全体のなかでもボール保持率が際立って高く、両ワイドをうまく使いながら崩していくスタイルで、見ていて非常に面白いチームだ。そのなかで三笘は左のウイングを主戦場にしている。

 周りにはDFペルビス・エストゥピニャンやMFアレクシス・マック・アリスター、MFモイセス・カイセドなど非常に能力の高い選手たちがいて、三笘と相性もいい。監督がロベルト・デ・ゼルビに変わってから、両サイドの三笘とMFソリー・マーチがより生きる形に戦術が変わったことも大きいだろう。

 三笘のコメントで「ビルドアップにあまり参加しなくてもいい」という趣旨の言葉があったが、それは彼がいい位置でボールを受けて、能力の最大値を引き出そうという形だ。ビルドアップ時に中央の選手たちで回してサイドを空け、三笘やマーチが前を向いてボールを受けられる形を極端に作ってくる。

 サイドバックを高い位置に上げ、三笘が開いている時はエストゥピニャンが中に入り、中に入っている時は開く。カイセドがアンカーに落ちるとマック・アリスターやMFパスカル・グロス、MFアダム・ララーナが高い位置で横並びになったり。チームとしての形がありながら、それが一つではなく相手によって変えることができて、なおかつボールの出口は明確にデザインされている。

 そうした形がしっかりとしているから三笘はビルドアップで下がる必要がなく、仕掛けの駒として高い位置でいい準備ができ、突破力がより生かされている。三笘の活躍を語る上で、ブライトンというチームの要素は欠かせないものになっている。

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