レアル、リバプール戦での逆転勝利を呼び込んだふたつの要因。下馬評の低さをヴィニシウスが覆した (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

【エムバペ級存在感のヴィニシウス】

 2点先行されても、レアル・マドリードに可能性を感じた理由はもうひとつに、ヴィニシウス・ジュニオールにリバプールが手を焼いていたことがある。左ウイングを務めるブラジル代表にボールが渡ると、嫌なイメージが湧いたのか、スタンドの観衆まで沈黙したように見えた。

 昨季のCL決勝トーナメントを振り返れば、レアル・マドリードの快進撃を牽引したのはカリム・ベンゼマとヴィニシウスのふたりだった。下馬評で上回るリバプールをはじめとするがまさかの敗戦を喫した理由は、彼らふたりの動きを止められなかったことにある。

 前半21分。左サイドでベンゼマからヴィニシウスに短いリターンパスが渡ったとき、得点の予感はしなかった。相手ディフェンダー3人がその周りを囲んでいたからだ。完全に捕まえてはいなかったので、隙はあったと言えばあった。しかし次の瞬間、ゴールが生まれると予想した人はいなかったはず。ヴィニシウスが1点差とした一撃は、見るものを驚かせる、まさしくスーパーゴールに値した。

リバプール戦の逆転劇を牽引したヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリード)リバプール戦の逆転劇を牽引したヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリード)この記事に関連する写真を見る すると流れは一変する。前半36分、レアル・マドリードのフェデリコ・バルベルデが前線に出した縦パスは一瞬、長すぎたかに見えた。リバプールのCBジョー・ゴメスはボールを追うヴィニシウスの動きを封じつつ、GKアリソンに確保したボールを戻そうとした。だがヴィニシウスの走力に圧されたのだろう。やさしくないボールを返してしまう。慌てたアリソンがこれを蹴り返すも、ボールはヴィニシウスに当たりリバプールのゴールに跳ね返っていった。

 2カ月ほど前に決勝戦を終えたカタールW杯で、ブラジル代表のヴィニシウスに特別な思いを抱くことはなかった。それが、ベンゼマの左側でプレーするレアル・マドリードに戻ると一転、無敵のような状態になる。CLの決勝トーナメントに入ると、それはいっそうスケールを高める。パリ・サンジェルマン&フランス代表のキリアン・エムバペと比較したくなるほど存在感である。

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