レアル、リバプール戦での逆転勝利を呼び込んだふたつの要因。下馬評の低さをヴィニシウスが覆した
昨季決勝の再戦となったチャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦、アンフィールドで行なわれたリバプール対レアル・マドリードの第1戦は、立ち上がりから波乱の展開になった。スタンドの声援に乗るように激しくプレスを掛けるリバプールに、ホームの利が見て取れた。攻めるリバプール、守るレアル・マドリード。両者の攻防の図は即、スコアとなって表れた。
リバプールの右ウイング、モハメド・サラーが中央に差し込んだボールを、ダルウィン・ヌニェスが右足で巧みに合わせた先制点は開始4分。GKティボー・クルトワのミスを誘い、サラーが追加点を押し込んだのはその10分後だった。
リバプールには、ミランとイスタンブールで戦った2004-05シーズン決勝、0-3で迎えた後半の立ち上がりを想起させる勢いがあった。0-3から3-3に持ち込み、延長、PK戦の末にミランを下した。4度目の優勝から20年間、低迷していたリバプールは、この通算5度目優勝を機に、欧州のトップグループにカムバックした。2018-19シーズンには通算6度目の優勝に輝いている。
レアル・マドリードも似たような道を歩んでいる。1997-98シーズンに32年ぶりの優勝を飾り復活を遂げると、そこから昨季まで24年間、欧州のトップクラブの座を維持している。
昨季の決勝で対戦した時、下馬評が高かったのはリバプールだ。しかし、勝利したのはレアル・マドリードだった。そしてリバプールは今回の一戦でも、下馬評でわずかに上回っていた。レアル・マドリードの昨季の優勝を"半分フロック"とブックメーカー各社は判断したのだろう。リバプールに前半早々2-0とされながら、慌てなかった理由かもしれない。
レアル・マドリードが昨季、決勝戦を含めた決勝トーナメント1回戦以降の4試合(パリ・サンジェルマン、チェルシー、マンチェスター・シティ、リバプール)は、流れ的にはほぼすべて逆転劇だった。リードを許すことに慣れていた。この日の前半14分以降、5ゴールを連続して奪ったサッカーは、まさに昨季の続きを見るようだった。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。