「理由もなく勝つ」レアル・マドリードはCL連覇をできるか。ベンゼマ、ヴィニシウス、モドリッチら「人」に依存したアナログサッカーの強み
第3回:レアル・マドリード
CL連覇を狙うレアル・マドリード。2月11日には、FIFAクラブワールドカップを制したこの記事に関連する写真を見る
【ベンゼマ&ヴィニシウスという武器】
昨シーズン優勝、ディフェンディングチャンピオンのレアル・マドリードは、最多14回の優勝回数を誇る。ファイナル進出時の勝率も高く、欧州カップ戦は得意中の得意。ただ、レアルが戦術のイノベーターだったことはない。
今季も優勝メンバーは健在、カゼミーロはマンチェスター・ユナイテッドに移籍したが、フランス代表のオーレリアン・チュアメニを獲得して穴を埋めている。攻撃の切り札は2022年のバロンドール受賞者カリム・ベンゼマとヴィニシウス・ジュニオール。
左ウイングのヴィニシウスは、積んでいるエンジンが違う。初速でトップスピードに入り、ボールコントロールも乱れない。単純なワンツーでもスペースがあれば突破できる。縦突破もカットインもできて、そこからのシュートが正確。
そして得点力の高い左ウイングとの関係の作り方において、ベンゼマほど経験値の高いCFもいない。レアルではクリスティアーノ・ロナウドとコンビを組んできた。ただ、ヴィニシウスはロナウドのようにクロスボールから得点するタイプではないので、ボックスの中は基本的にベンゼマのものだ。
左のヴィニシウスが固定的であるのに対して、逆の右サイドは流動的。フェデリコ・バルベルデはウイングというよりMFで、プレーエリアも内側になる。マルコ・アセンシオは右に張りながらカットインするタイプ、ロドリゴはコンビネーションで真価を発揮するので、プレーエリアはやはり中寄りになる。
空きがちなサイドを使うのは右サイドバック(SB)の役割だ。ダニエル・カルバハルにやや衰えも見られ、ここをどうするかは課題の1つかもしれない。
右サイドの流動性は戦術的な特徴と言えるかもしれないが、最初からそう設計されているわけではなく、起用する選手に合わせてそうなっているのがレアルらしさだ。伝統的にまず「選手ありき」のクラブで、ライバルのバルセロナとは仕上がりは似ているが、その過程が理詰めのライバルとは対照的なのだ。
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著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。