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「理由もなく勝つ」レアル・マドリードはCL連覇をできるか。ベンゼマ、ヴィニシウス、モドリッチら「人」に依存したアナログサッカーの強み (3ページ目)

  • 西部謙司●文 Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

【アナログの強み】

 全体的にデジタル化している欧州トップクラブのなかで、レアルはアナログ感の強いチームと言える。

 昨季はアナログの強みが全開だった。戦術が「人」に依存しているので、選手が変わってしまうと再現性はない。ベンゼマ、ヴィニシウス、モドリッチを欠けば違うチームになってしまうだろう。しかし、逆に選手が揃っていればデジタルにはない強みもあるのだ。

 自動車のスピードメーターなら数字で表記するのがデジタル、針が動くのがアナログ。デジタルのほうが明確だが、数字と数字の間がない。サッカーはそんなに明確に割りきれるものではなく、そこまで合理的になっていないので、間を埋めるものが常に必要とされている。また、そうでなければ、敗退しているはずの試合をことごとく切り抜けて優勝した昨季のような現象は起こりえない。

 かつてシャビ・エルナンデス(現バルセロナ監督)はライバルチームを「理由もなく勝つ」と評した。確かにそのとおりで、レアル・マドリードというチームの得体の知れなさを的確に表現している。

 ただ、「理由もなく勝つ」理由はたぶんある。それを誰も説明できないだけで、おそらく当人たちもそうなのだが、理由もなく勝てることだけはわかっている。1950年代から、ある種の奇跡を起こし続けているクラブなのだ。

 デジタル化が進んだチームは洗練されていて強く見える。例えば、カーナビの指示どおりに運転すれば、スムーズに目的地に着くことができるようなものだ。ドライバーが指示を無視しさえしなければ、ほぼ確実に着く。

 ただ、ナビゲーションというシステムが失われたらどうなるか。レアルは道を覚えている選手たちの集団で、だからシステムにはあまり頼らない。見た目は変わらないかもしれないが、何かアクシデントが起こったり、窮地に追い込まれたりした時の修正能力は格別なものがある。アナログの強みだ。

 結局は「人」。レアルの方針は今のところ合っている。ただし、人的資源に頼ることでの無秩序や混乱も起きやすく、決勝まで進めば無類に強いかわりに、その手前であっさり敗れることもある。

 昨季のように奇跡を連発することはまずないので、レアルの連覇は難しいだろうという予想は簡単だが、なにせ得体の知れないチームなので何が起こるかはわからない。

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著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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