「理由もなく勝つ」レアル・マドリードはCL連覇をできるか。ベンゼマ、ヴィニシウス、モドリッチら「人」に依存したアナログサッカーの強み (2ページ目)

  • 西部謙司●文 Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

【カギを握る新世代の成熟】

 強いヤツを集めれば強い――この身も蓋もない強化方針を貫いてきた。スタジアムにその名が残されているサンティアゴ・ベルナベウ会長の時代から、その時々のスーパースターを片端から取りそろえる補強戦略は、補強というよりコレクションである。

 ポジションがまる被りしても気にしないかつての無頓着さはなくなったが、豪華スカッドは現在も変わらない。GKには世界トップクラスのティボー・クルトワ。ダビド・アラバ、エデル・ミリトン、アントニオ・リュディガーと屈強なDFを揃える。

 SBが目下のところ決め手がない状態とはいえ、万能DFのナチョがいて、アラバはセンターバックとSBのどちらでもプレーできる。

 レアルのエンジンルームは長い間、ルカ・モドリッチ、トニ・クロース、カゼミーロのトリオだった。この3人こそ栄光の原動力だったのだが、カゼミーロが移籍し、クロースも以前よりも出場機会を減らしている。

 37歳のモドリッチも、さすがにフルシーズン出ずっぱりというわけにはいかなくなった。彼らに代わる世代としてチュアメニ、エドゥアルド・カマビンガ、バルベルデがいるとはいえ、まだ完全な世代交代には至っていない。

 モドリッチとクロースが左右に開きながら落ちてSBを押し上げるビルドアップはレアルの定番だが、これも戦術的に用意したというより2人のアイデアとプレースタイルから自然にそうなったと思われる。他の選手でも同じ動き方はもちろん可能だが、モドリッチとクロースほどの効果は期待できないだろう。カゼミーロを含めて3人の阿吽の呼吸がフィールド上の解決策だったからだ。

 チュアメニ、カマビンガ、バルベルデ、ダニ・セバージョスがその域に達するにはまだ時間がかかる。昨季はその過渡期の状態をうまくよい結果に結びつけたが、カルロ・アンチェロッティ監督は焦らずに新世代を熟成している。それだけにチーム力のマイナスとプラスが同時に生じていて、昨季からの大きな積み上げには至っていない。

 ただ、そうした状況とは無関係に勝ってしまえるのが伝統でもある。

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