元サッカー日本代表・岩本輝雄のカタールW杯の歩き方。各国サポーターとの交流や地元クラブの練習見学、砂漠ツアーと試合以外でも大忙し (3ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko

【フランスに見た新しい攻撃トレンド】

――試合はどのカードを見たんですか?

 最初の試合は、大会2日目のオランダ対セネガルです。この試合は入場するためのアプリがサーバーダウンで使えなくなるトラブルがあって、なかなかスタジアムに入れなかったんですよ。怒っている外国人もたくさんいるし、「この大会大丈夫かな」とその印象のほうが強い大会スタートでした(笑)。

 次に見たのがフランス対オーストラリア。両サイドのキリアン・エムバペとウスマン・デンベレがすごいのはもちろんなんですけど、アントワーヌ・グリーズマンがとくに目につきましたね。

 あれだけのスーパースターなのに、前でゲームメイクをしながらサボらずにちゃんと下がって守備もして、そこまで守備に汗をかくのかと。目立ってはいないかもしれないけど、チームへの貢献度は絶大なものがありますね。

――今大会のグリーズマンはフランスのキーマンと言える存在でしたね。

 1試合を見ただけで、間違いなくフランスは優勝候補だとわかりました。そう思ったあとにフランス対デンマークを見たら、デンマークが組織的な守備でエムバペやデンベレを抑えて、素早いカウンターで圧倒していました。フランスは負ける寸前だったんだけど、最後はグリーズマンのペナルティーエリア右角から巻いたクロスをエムバペが合わせて決勝点。

 フランスの攻撃を見ていて面白かったのがあります。エムバペが左サイドでボールを持って、ペナルティーエリアの横まで行きますよね。相手は全体に縦を切ってきて、エムバペもそれはわかっているんです。

 そして、中のオリビエ・ジルーとグリーズマンは斜めに走って相手DFを引き連れていくと、逆サイドのデンベレが絶対にマイナスのスペースに走り込んでくる。そこへエムバペがペナルティーエリアのライン上に綺麗な横パスを通して、デンベレがシュート。これは新しいトレンドだと思いましたね。

 今大会は組織的にいいチームはたくさんあったけど、やっぱり最後に怖いのは点を決めるところ。日本で言えば三笘薫もすごかった。でもチャンスのところで決められれば、結果は違っていたかもしれない。

 もちろん、それは結果論だけど、最終的にそこで決められる選手がいるチームが勝ち残ったので、改めて個の力の重要さも感じた大会でしたね。

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