W杯優勝へ突き進むフランスはイングランドの堅守を崩せるか。爆走だけではない好調エムバペの頭脳プレーに注目 (2ページ目)

  • 篠 幸彦●文 text by Shino Yukihiko
  • 西村知己●イラスト illustration by Nishimura Tomoki

Answer 
エムバペが下がってパスを受け、前線のギャップに走り込んだジルーにスルーパス

 ポーランドの引いた守備陣に対し、見事にスペースを作り出したフランスが崩した場面だ。

エムバペが中盤脇のスペースに下りてパスを受け、前線のギャップに走ったジルーへスルーパスエムバペが中盤脇のスペースに下りてパスを受け、前線のギャップに走ったジルーへスルーパスこの記事に関連する写真を見る まずポイントは、フランスの両サイドバックが高い位置を取り、ポーランドの両サイドMFがDFラインまで押し込まれていることである。これによりポーランドは中盤が3人になり、中央の脇にスペースが生まれるようになっていた。

 フランスは、右サイドでボールを持ったデンベレが、上がってきたセンターバックのウパメカノにパスを通すと、次の瞬間に前線のエムバペが相手のピオトル・ジエリンスキの脇にできたスペースに下りてくる。

 この時、ジエリンスキはタイミング的にスライドが間に合わず、ポーランドはDFが対応するしかない。そこで釣り出されたのがマティ・キャッシュだ。そのキャッシュにつられてカミル・グリクもラインを上げてしまった。

 これによりポーランドの守備ラインに決定的なギャップが生まれた。次の場面で、そのギャップにすかさず走り込んだのがジルーである。

 エムバペはワンタッチで反転すると、素早くジルーへスルーパス。そして抜け出したジルーはこれを受け、左足シュートでサイドネットへ決めて先制点となった。

 一時は6人が並んだポーランドの守備ラインだったが、逆に中盤に空いたスペースをフランスが巧みに利用し、守備ラインにギャップを作って鮮やかに崩した。

 ポーランドを破ったフランスは、準々決勝でイングランドと対戦する。イングランドがここまで失点を許した相手は、初戦のイランのみ。強固な守備を相手に、王者フランスがどんな戦いを見せるのか注目である。

【筆者プロフィール】
篠幸彦(しの・ゆきひこ)
1984年、東京都生まれ。編集プロダクションを経て、実用系出版社に勤務。技術論や対談集、サッカービジネスといった多彩なスポーツ系の書籍編集を担当。2011年よりフリーランスとなり、サッカー専門誌、WEB媒体への寄稿や多数の単行本の構成を担当。著書には『長友佑都の折れないこころ』(ぱる出版)、『100問の”実戦ドリル”でサッカーiQが高まる』『高校サッカーは頭脳が9割』『弱小校のチカラを引き出す』(東邦出版)がある。

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