ドイツ代表はブラジルW杯から下降線も、初戦に強さを発揮している理由 (2ページ目)
手心を加えるという気質に欠ける
ゲルマン魂にはもうひとつの特徴が存在する。相手を徹底的に叩き潰す力だ。隣国のオランダ人記者はこう語る。
「我々オランダ人は相手の息の根を完全に止めようとしません。ほどほどのところで止めておきますが、ドイツ人は違います。容赦しません。相手が瀕死の状態にあっても、なおパンチを浴びせようとします」
2014年ブラジルW杯準決勝は、そんなドイツ人気質を象徴した試合だった。ベロオリゾンチのミネイロンで行なわれた開催国ブラジルとの一戦だ。スコアは1-7。すっかり戦意を喪失させているブラジルに、最後の最後まで殴りかかる姿にドイツの真髄を見た。
国際試合においては5点差以上つけると、相手が立ち直れなくなる可能性があるので、そこらあたりで止めておくことがサッカー界の礼儀というか、一種の嗜みになっている。日本が2001年3月、フランスのスタッド・ドゥ・フランスで行なったアウェー戦がそうだった。後半中頃、フランスは5点目のゴールを奪うと、点を狙いに行くことを止めた。ベンチから指示が飛んだことを、筆者は確認している。
恐ろしいことに、ドイツ人には相手に手心を加えるという気質が決定的に欠けているのだ。2002年日韓共催W杯でも、ドイツは無遠慮ぶりを発揮している。札幌ドームで行なわれた初戦の対サウジアラビア戦。スコアは8-0だった。8点目のゴールが後半のロスタイムだったという事実に、手心を加えないドイツらしさが滲み出ている。2010年南アフリカ大会でも初戦のオーストラリア戦は4-0だった。2014年ブラジルW杯の初戦も、ポルトガルに4-0で大勝している。
初戦で大勝してしまえば、グループリーグ突破はほぼ決まったようなもの。残る2試合が楽になる。ドイツは初戦にかけてくる。2022年カタールW杯初戦でドイツと戦う日本が心配になる。選手のルーツが多様化したことで、ドイツ代表の気質にさらなる変化が起きていてほしいものだ。
2014年ブラジルW杯で優勝したドイツ代表の選手たちこの記事に関連する写真を見る 2014年ブラジルW杯で通算4度目の優勝を飾ったドイツは、決勝トーナメント1回戦ガーナ戦までは4-3-3で、それ以降は4-2-3-1で戦っている。4-3-3でアンカーを務めたのは、170センチの小兵でキャプテンのフィリップ・ラームだった。
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