ドイツ代表はブラジルW杯から下降線も、初戦に強さを発揮している理由

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

ドイツ代表の強さの秘密(3)
(1)「ドイツ代表はなぜ強いのか。プラティニのフランスもお手上げだった全盛時代」はこちら>>

 ドイツ代表に初めて移民系の選手が選出されたのは、西ドイツ時代の1974年。ドイツ人の母親とアフリカ系アメリカ人の父を持つ、エルヴィン・コステデという選手だった。しかしそれからしばらくの間、彼が最初で最後の移民系の選手だった。1982年スペインW杯の準決勝で対戦したフランス代表には、その時すでに、マリウス・トレゾール、ジェラール・ジャンビョン、ジャン・ティガナというアフリカ系の移民選手が3人いた。

 フランス代表はそこから40年の間に、移民系の選手が大半を占めるまでに至ったが、ドイツも2002年日韓共催W杯の頃から、その存在が目立ち始めていた。1990年の東西ドイツ統一後、国策として移民を受け入れたことと深い関係がある。

 2002年日韓共催W杯はミロスラフ・クローゼ(ポーランド系)とジェラルド・アザモア(ガーナ系)、2006年自国開催のW杯はアザモアとルーカス・ポドルスキー(ポーランド系)の2人だったが、2010年南アフリカW杯になると、メスト・エジル(トルコ系)、デニス・アオゴ(ナイジェリア系)、ポドルスキー、ピオトル・トロホウスキー(ポーランド系)、カカウ(ブラジル系)、ジェローム・ボアテング(ガーナ)と、一気に6人までその数を増やした。

 2022年カタールW杯の最終メンバーに入りそうな候補には、ルーカス・ヌメチャ、カリム・アデイェミ、ジャマル・ムシアラ(いずれもナイジェリア系)、アントニオ・リュディガー(シエラレオネ系)、セルジュ・ニャブリ、ヨナタン・ター(ともにコートジボワール系)、イルカイ・ギュンドアン(トルコ系)、レロイ・サネ(セネガル系)、ティロ・ケーラー(ブルンジ系)、ベンヤミン・ヘンリヒス(ガーナ系)など、少なく見積もっても10人はいる。多様な民族の集団に変貌を遂げている。

 その影響としてよく言われるのは、ゲルマン魂の減退だ。多様化するにつれドイツ人気質は薄まっている。身体能力の高い選手は増加の一途を辿るが、精神性に基づくゲーム終盤の怖さは、かつてのほうが上だった。

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