ドイツ代表はブラジルW杯から下降線も、初戦に強さを発揮している理由 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

「いい時のドイツ」には特徴がある

 ラームは本来、左も右もできるSBだ。いまでこそ両方できるSBは珍しくないが、当時は世界的に貴重な存在だった。他ではジャンルカ・ザンブロッタ(イタリア)くらいに限られた。しかし、ザンブロッタは守備的MFではプレーしていない。そうした意味でラームは唯一無二の、多機能的な選手だった。

 ラームを守備的MFとしたのは、ジョゼップ・グアルディオラのアイデアだ。彼がバイエルンの監督に就任したのは2013-14シーズン。ブラジルW杯の前のシーズンだ。時のドイツ代表監督ヨアヒム・レーヴが、グアルディオラのアイデアを拝借したことは間違いない。

 右SBとして出場した時にみせるインナーラップも新鮮に映った。開いて構える右ウイング、トーマス・ミュラーの内側を駆け上がっていくプレーだが、サイド攻撃はこれによって多彩になった。

 かつてのドイツは、サイド攻撃と言えば、両ウイングバックがライン際を駆け上がるスタイルが定番だった。ハンス=ペーター・ブリーゲルやアンドレアス・ブレーメに代表される馬力、直進性、キック力等に優れた選手の単独プレーに委ねられていた。ウイングバックによるサイド攻撃と、インナーラップを交えたラームの攻撃参加は、真逆なコンセプトと言えた。

 ウイングバック時代は、当然のことながら布陣は5バック同然の3バックだった。スタイル的には攻撃的とは言えなかった。ドイツ人特有の体力を武器に、相手を押し返すサッカーだ。

 5バックの考え方は4人+1人。1はリベロ役だ。かつてのフランツ・ベッケンバウワーや、ウーリッヒ・シュティーリケがそうだったように、もともとはゲームメーカーだった中盤選手を最後尾に配すケースがドイツでは目立った。

 真っ先に想起するのはバロンドールを獲得したマティアス・ザマーになるが、最後尾から組み立てを図ろうと、ローター・マテウスやオラフ・トーンといったけっして大きくない元10番も、リベロとして活躍している。

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