ドイツ代表はなぜ強いのか。プラティニのフランスもお手上げだった全盛時代

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

ドイツ代表・強さの秘密(1)

 1974年西ドイツW杯決勝の西ドイツ対オランダは、現代サッカーを語る時、何かと引き合いに出される、まさに語り草となる試合だ。この時、敗者のオランダが披露したトータルフットボールは「その前と後でサッカーの概念が180度変わった」(プレッシングフットボールの提唱者、アリゴ・サッキ)と言われるほど斬新で画期的だった。近代サッカーの幕開けとなる試合と位置づけることができる。

 日本のサッカー界にとっても、歴史に刻まれるべき事象と言って大袈裟ではなかった。西ドイツ対オランダは、日本で初めて生中継されたW杯の試合としても知られる。48年前、リアルタイムで観た日本人は少なからずいた。当日の1974年7月7日は、参議院議員選挙の投開票日と重なっていた。しかし、東京12チャンネル(現テレビ東京)は、他局が開票速報やその関連番組を放送するなか、W杯決勝の衛星中継に打ってでた。そうした背景も含めて、忘れることのできない思い出となっている。

 勝者は西ドイツで敗者はオランダだったが、先述のとおり、サッカーの中身について語ろうとした時、毎度、取り沙汰されるのは敗者の名前だ。敗者がいくらいいサッカーをしても、歴史に刻まれるのは勝者。健闘した敗者の印象は概して時間の経過とともに薄れるものだが、1974年のW杯決勝は、そう言った意味では例外にあたる珍しい試合だと言える。

 西ドイツの優勝は1954年スイスW杯に次ぐ2度目だった。以降、優勝2回、準優勝3回、3位2回と、W杯で好成績を収めている。準優勝は3度あるが、優勝がいまだに1度もないオランダとは、成績面において顕著な開きがある。サッカー界には「いいサッカーをしても勝たなければ意味がない」との考え方があるが、それはドイツ好きがオランダ好きに向けた言葉のようでもある。

 西ドイツは1978年アルゼンチンW杯こそ2次リーグで敗退したが、1982年スペイン大会、1986年メキシコ大会と2大会続けて準優勝に輝くと、1990年イタリア大会では通算3度目の優勝を飾る。

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