カタールW杯の開幕日変更が正式発表。日々変化するルールと冷めた市民...開催100日前の現地でいま何が起きているか (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

開幕戦のカードが変更

 カタール政府は大会中の治安にも気を使っている。そのため、パキスタンとポーランドから警備の人員を借りることにした。また、参加する32カ国すべてに警官を派遣してもらうことを打診している。もちろん日本も含めてだ(日本がそれに応じるかは別だ)。イングランドは20人ぐらいの人間を派遣する予定だ。ただこうした警備の強化はサポーターを守るというより、カタールを守るという役割が大きいのかもしれない。
 
 組織委員会は、これからの100日はW杯成功に向けてのブラッシュアップの時期だと言う。裏を返せば、これからも日々状況が変わっていくということでもある。

 今のところ、お酒は4つ星以上のホテル内か、認められたパブでのみで飲めるが、それ以外はダメだ。スタジアムでもアルコール販売はなし。大会スポンサーのバドワイザーが交渉しているところだが、ノンアルコールのビールだけは認められるかもしれない。

 少し前まで、カタールへの日帰り旅行は禁止されていたが、2カ月前に政府はその方針を180度転換し、今は逆にそれを推進している。サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、オマーンの近隣の4カ国から「マッチデー・シャトル」という飛行機が飛び、「Hayyaカード」を持っていれば日帰りも可能になった。ドバイとの間には1日60本が飛ぶと言う。政府がこれを許可したのはホテル不足を解消するためだろう。

 恋人たちが屋外でキスをしたら、同性の恋人同士が手をつないだら、女性が露出度の高い服を着て歩いたら......どうなるか、今はまだわからない。しかしたとえそれが許されても、翌日には真逆のルールに変わる可能性もある。

 この原稿を書いている間にも、それを物語るニュースが飛び込んできた。開幕戦は11月21日、グループAのセネガル対オランダ戦だったが、カタールが急遽、カタール対エクアドルの試合を開幕戦にすると言い出し、開幕日を1日前の20日にすると正式発表したのだ。本来なら開幕戦を戦うはずのカタールが、なぜその日の第3試合になっていたのかは謎だが、とにかく11年も準備期間がありながら、100日前になっての日程の変更である。これによって他の試合のスケジュールも変わってくる可能性があるし、チケットを持っている人々は飛行機やホテルを予約し直さなくてはいけない。
 
 これからの100日間、その"変化"はより激しくなるだろう。

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