アンチェロッティが「名将」にバケた日。恩師サッキとは異なる「柔軟性」を選び、史上初の欧州5大リーグ全制覇 (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

CL優勝最多記録の更新なるか

 あるいは、昨年の秋口からカゼミロ、ルカ・モドリッチ、トニー・クロースの中盤3人を固定したことでチームに安定性が生まれ、それが公式戦10連勝を含む15戦無敗記録につながった。ベテラン3人を起用し続けるリスクはあったが、結果的にその間に積み上げた勝ち点がリーグ優勝を決定づけたと言っても過言ではない。

 チームの基本戦術も、シーズン序盤は前からプレスを試みるも不安定さが露呈したため、CLシェリフ戦(昨年9月28日)、エスパニョール戦(昨年10月3日)の連敗を境に、ボールを握られた場合は無理をせず、自陣でブロックを作るスタイルに変更。そこにFWヴィニシウス・ジュニオールの覚醒という要素が加わったことで、揺るぎない堅守速攻という武器を手にすることにも成功している。

 CL決勝トーナメントでは、その堅守速攻とボール保持を使い分けながら、見事な大逆転劇を繰り返すに至った。これも、アンチェロッティが持つ柔軟性の証左と言える。

 果たして、クロップ監督が率いるリバプールとのCL決勝戦で、アンチェロッティはどのような采配を見せるのか。勝敗の行方とともに気になるのは、そこになる。

 ちなみにアンチェロッティは、ミランで2回(2002--03、2006--07)、レアル・マドリードで1回(2013--14)と、計3回のCL優勝を誇る。これも、リバプールの名将ボブ・ペイズリー(1976--77、1977--78、1980--81)、レアル・マドリードを率いて史上初の3連覇を成し遂げたジネディーヌ・ジダン(2015--16、2016--17、2017--18)と並ぶ、監督としてのCL優勝最多記録だ。

 もし今回の決勝戦でレアル・マドリードが優勝トロフィーを掲げた場合、イタリアが誇る優勝請負人は、CL史上最多優勝記録を塗り替えることになる。

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