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ファン・ハールのカリスマ性は70歳になっても絶大。蘇ったオランダ代表、2大会ぶりのW杯へ (3ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

 この自信はハッタリではなく、根拠があった。ファン・ハールはモンテネグロ戦後のネガティブな雰囲気を、翌日のミーティングと練習でポジティブなものに変えていた。ミーティングではモンテネグロ戦のラスト10分に絞って分析した。

「我々の目指すサッカーは『トータル・プレッシング(試合を通じてハイプレッシングをかける戦術)』だが、モンテネグロ戦のようにチームの調子が悪い時には『相手を挑発するプレッシング(カウンターのスペースを予め作っておくプレッシング戦術)』を用いないといけない。今度の試合は、ノルウェーは勝つためにゴールをどうしてもとらないといけない。ならば『相手を挑発するプレッシング』も使い分けないといけない」

 試合翌日の練習は、モンテネグロ戦の控え選手と途中出場選手による紅白戦だった。現地の報道では、ファン・ハールが「ファンタスティック、マタイス(デ・リヒト)!」「いいぞ、よくやったスティーブン・ベルフワイン!」「やあああ、すばらしいぃぃ!」といった掛け声が飛んだという。

 私には、その声が脳内で再生できる。というのも、ファン・ハールの大げさに選手を褒める声がけは、彼の指導法の真骨頂だからだ。一方、猛烈に雷を落とすことも、彼はすることができたはずだ。

「ハードなアプローチをするか、ソフトなアプローチをするか、私は考えた。モンテネグロ戦のショックが選手にとって大きすぎたこと。そして、ノルウェー戦まで時間がないことから、私はソフトなアプローチを選んだ」

 この練習によって、チーム全体にエネルギーがみなぎったという。

 ところが、練習場からホテルまで自転車で戻った時、ファン・ハールは転がってしまい、腰にある小転子という骨を折ってしまった。試合前日の練習はカートに乗って行ない、試合当日はベンチに入らず車椅子に乗って、スタンドから携帯電話でフレーザーコーチに指示を授けることになった。

 ノルウェー戦を中継するNOS局との試合前日インタビューで、ファン・ハールは珍しく眼に涙をためてこう語った。

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