ファン・ハールのカリスマ性は70歳になっても絶大。蘇ったオランダ代表、2大会ぶりのW杯へ (4ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

「折れた骨が筋肉とつながっていて、ちょっとした動きをするだけ本当に痛いんだ。だけど、選手やスタッフたちが私に残って指揮をとってほしいというんだ。だから、私は指揮をとる。ポジティブさが戻った。私は感傷的になっている」

 11月16日、いよいよノルウェーとの決戦の時が来た。勝たなければいけないノルウェーだったが、全員が自陣に引いてしまって攻めてこない。なんと、ノルウェーのシュートは前半ゼロだった。

 しかし、これがオランダへの罠の可能性は大きい。オランダがトルコを6−1で葬り去った時(9月7日)のような「トータル・プレッシング」を実行し、フィールドプレーヤーが全員ノルウェー陣内に入ったら手痛い目にあうだろう。オランダはボール保持率を高めながらも、あらかじめボールを失った時のことを勘案して守備に人を余らせていた。

 こうして試合はオランダとノルウェーがにらみ合うような展開となる。SNSでは「眠くなりそうだ」という声があがり、テレビ解説の元オランダ代表MFラファエル・ファン・デル・ファールトはハーフタイムに「奇妙なゲーム」と不満げに話していた。

 だが、組織が機能不全に陥ったモンテネグロ戦と比べると、間違いなくオランダはひとりひとりの選手がチームのために戦っていた。たとえばCBのデ・リヒトが敵陣深くまで相手のセンターFWを追いかけたら、MFのデ・ヨングとワイナルドゥムが最終ラインに降りて5バックを形成していた。

 後半もノルウェーは攻めあぐみ、ロングスローから一度チャンスを作っただけだった。我慢を重ねたオランダは84分、モンテネグロ戦で批判を浴びたプリントのボール奪取からショートカウンターを仕掛け、右ウイングのベルフワインが強烈なシュートを突き刺して先制した。

 さらにアディショナルタイムには、ベルフワインが長駆ドリブルからゴールキーパーと1対1になり、最後はフリーのデパイにシュートを譲って2−0。カタール行きを決定づけた。

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