度肝を抜いた超絶ボレー。クライフ、ジダン、李忠成らが決めた歴史的瞬間 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 シュルシュルと巻くような回転のボールが、ゴールの左上隅に綺麗に収まっても、直ぐに歓声は沸かなかった。真実であることを確認するまでしばらく時間を費やすことになった。なにより筆者がそうだった。滅多に見られないものを見た幸福感に浸ることになった。同時に、14年前にミュンヘン五輪スタジアムで見たファン・バステンのゴールも脳裏に蘇ることになった。

 この一発が決勝点となりレアル・マドリードは優勝。ジダンは自らの力で、自らを初のCL覇者の座に押し上げた。ドラマ仕立ての左足スーパーボレーだった。

 日本人選手でも大一番でスーパーゴールを決めた選手がいる。2011年アジアカップ決勝。相手はオーストラリアで、試合は0-0のまま延長戦に入っていた。

 延長後半4分、李忠成がゴール正面やや深い位置で待ち受けたのは、長友佑都が左足で折り返したマイナス気味のボールだった。身体を開き、弓を射るようなモーションから、左足を正確にヒットさせたコントロールショットは、ゴール左上隅に綺麗に収まるビューティフルゴールとなった。日本がどちらかといえば劣勢を強いられている中で生まれた、まさに値千金のスーパーゴールでもあった。

 ボレーキックは足を振り上げるので、モーションは大きくなる。野球で言えばホームランを狙う大振りのスイングに見えるが、実際のところはミート打法だ。振り回さなくても、当たれば飛ぶ。向かってくるボールの勢いを利用するので、止まっているボールを蹴るより、力は要らない。

 ボールを弾く感じだ。ファン・バステンのボレーシュートでも触れたが、面でボールを捉えるラケット競技を想起する。

 1997年コパ・アメリカ、ボリビア大会。ブラジルがボリビア第2の都市、サンタ・クルスで行なった練習を取材に行った時の話だ。サイドからクロスボールを上げ、中央で合わせる練習の中で、圧倒的に光り輝いていたのはロマーリオだった。まさにラケットで撃ち返すように、ボールを的確にミートさせていた。

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