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「名選手、名監督にあらず」の格言を実証したスーパースターたち (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyam Shigeki
  • photo by REUTERS/AFLO

 そんなマラドーナが、2010年南アフリカW杯にアルゼンチン代表監督として臨んだ。

 就任したのは、2008年10月。アルフィオ・バシーレ監督の後任として、監督マラドーナはまずW杯南米予選に挑んだ。

 監督経験は乏しい。薬物違反で出場停止中だった現役時代(1994年〜1995年)に、デポルティーボ・マンディージュとラシン・クラブの監督を務めたことはあったが、1997年に現役を退いてからは、一度もどこかのチームで采配を揮ったことはなかった。

 その意味では、代表監督就任は無謀とも言える人事だった。

 案の定、アルゼンチン代表は大苦戦。南米予選では南米枠(4.5枠)外の5番手に転落したこともあった。最終的にはなんとか4位で本大会出場を決めたが、そこで馬脚を現した。対戦相手に恵まれ、ベスト8に進出したものの、ケープタウンで行なわれた準々決勝で、ドイツに0-4という屈辱的スコアで大敗する。

 2010年と言えば、リオネル・メッシの絶頂期だった。バルセロナでは2008-2009、2010-2011シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)を制していた。計6回受賞したバロンドールでも、2009年から2012年まで4年連続で受賞していた。

 そのメッシを、マラドーナは中盤で起用。ポジションに制約のないフリーマン的な役を与えた。ローマのオリンピコで行なわれた2008-2009シーズンのCL決勝(対マンチェスター・ユナイテッド)で、時のバルサ監督グアルディオラがメッシをゼロトップで起用したのとは対照的だった。

 守備力に問題のあるメッシをどこに配置したらリスクが少ないか。現場で見た者にとって、マラドーナのメッシ起用法は"ダメ監督のダメ采配"そのものに見えた。高い位置からプレスをかけてくるドイツの餌食になることは、戦う前からわかり切っていた。

 戦前の予想がここまできれいに的中したケースも珍しい。マラドーナ監督が"名選手、名監督にあらず"であることを世に知らしめた一戦となった。

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