日本代表が一流舞台に初めて立った日。
サッカーの聖地に刻まれた歴史

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 イングランド対ドイツと言えば、想起するのは1966年イングランドW杯の決勝戦だ(ドイツは当時西ドイツ)。2-2で迎えた延長11分、イングランドのFWジェフ・ハーストが放ったポスト直撃弾は、その勢いで真下に落下。審判団はゴールラインを完全に割っていたと判断し、ゴールを認めたが、実際は微妙だった。

 ラインを割っていなかったのではないかとする声の方が多数を占めるほどだが、1966年大会決勝の明暗はこの判定で決まったようなものだったので、判定を巡る論争はいまなお続いている。サッカー史に刻まれる微妙な判定であり、不利を被った側のドイツ人にとっては、恨みを伴う判定となっている。メラーがウェンブリーを埋めたイングランド人サポーターに向け、拳を高々と突き上げた理由である。

 新スタジアムの完成は2007年。旧スタジアムを完全に取り壊し、同じ場所に9万人収容の新スタジアムを建設した。天井は開閉式。スタンドの前列は可動式で、陸上競技にも使用できる。建設中、現場の担当者に話を聞けば、トイレの数、とりわけ女子トイレの数をしきりに自慢していた。「その数は全部で2618あり、そのうち女子トイレは60%以上を占める」と。

「世界のスタジアムを見ると女子トイレに行列ができることが当たり前になっているが、これは今日的な姿とは言えない」

 その話を聞いたあと、横浜国際競技場(日産スタジアム)に行くと、ハーフタイムの女子トイレにはゆうに50メートル以上の列ができていた。2002年日韓共催W杯のロシア戦。後半6分に稲本潤一が決めた決勝ゴールを、現場に行きながら見逃した女性は実際、相当な数に及んだのであった。

 新スタジアムについて、ひとりの日本人として唯一残念に思うのは、旧スタジアムに存在したツインタワーが取り壊されたことだ。精神的な拠りどころが失われたような印象を受ける。

 最後に観戦した試合はもう7年前になる。2013年10月15日。2014年ブラジルW杯欧州予選のポーランド戦だ。イングランドが2-0で勝利を収め、本大会出場を決めた一戦である。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る