元祖天才が久保建英を詳細に分析。「消えた天才たちとは明確に違う」 (3ページ目)

  • 鈴木智之●取材・文 text by Suzuki Tomoyuki
  • photo by AFLO

消えていった天才Jリーガーたち>>

 過去を振り返っても、日本サッカー界に天才と呼ばれる選手はたくさんいた。しかし、順風満帆にキャリア重ねていけた選手はそれほど多くはなく"消えた天才"など、ネガティブな表現をされることも少なくない。

 菊原氏はその理由を「現代サッカーが組織化し、高度化してきたので、どのポジションの選手にも、オールラウンドな能力が求められるようになってきたからではないでしょうか」と分析する。

「僕もそうでしたけど、かつては得意な部分を徹底的に伸ばすのが、よいことなのだと考えられていました。でもいまはサッカーが組織化し、高度になってきています。攻撃も守備もできて、組織の一員としてプレーする戦術理解もあって、そのなかでスペシャルな部分を発揮できる選手でないと、評価されなくなってきています」

 現在のサッカーは、FWは攻撃だけ、DFは守備だけをしていればいいわけではない。2019-20シーズンの欧州チャンピオンズリーグ決勝を見てもわかるとおり、ネイマールでさえも、守備のタスクを課される時代だ。

「サッカーを受験勉強に置き換えると、かつては100点の科目があれば、0点の科目があっても目をつぶってもらえました。でもいまは、FWにも守備の能力が求められ、センターバックにも足元の技術が求められます。ヨーロッパのトップレベルのクラブであれば、いくらドリブルがうまくても、守備が苦手、戦術的な動きができない選手は、試合に出られません。久保選手がこれまで天才と呼ばれてきた選手と違うのは、できないことをそのままにしておかなかった部分だと思います」

 そう言って、菊原氏は久保の中学時代の恩師とのエピソードを明かした。久保はスペインから日本に返ってきて、FC東京U-15むさしに加入した。当時の監督は中村忠氏(現FC東京U-18監督)。菊原氏の読売時代のチームメイトである。

「ミニラ(中村監督の愛称)が久保選手に、利き足とは反対の右足を『あまり使わないんだね』と言ったら、すぐに練習して積極的に使うようになったそうです。FC東京のトップチームに昇格した時も、長谷川健太さん(監督)に『守備面が足りない』と言われて、最初は苦労したみたいですけど、少しずつ守備もレベルアップしてきて、試合で活躍するようになりました。久保選手は、自分の足りない部分に対して意識的に取り組み、改善していく力が強い印象があります。そこが、いままで天才と呼ばれた選手とは違う部分ではないでしょうか」

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