マンU本拠地で見た、魅惑の両ウイング&レアル主将の魔術的ドリブル (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

「ギグスと優勝を喜ぶ香川真司」はこちら>>

 あまりにも近いので、スタジアム界隈の雰囲気を味わうなら、10分ほど歩くことになるメトロリンクを利用した方がいいのかもしれない。

 スタジアムはユーロ1996開催にともない、1995年、約5万5000人収容のスタンドに改築。さらに2006年の改築では、約2万人増の7万5000人収容のスタンドに巨大化した。

 その背景には、海外からの観戦旅行者が増えたことがある。加えて、女性や子供も取り込もうとした。オールド・トラッフォードは健全な娯楽施設へと様変わりした。

 1993年に初めて訪問した時、少々危なっかしい雰囲気だった。

「禁煙」と書かれてあるのに煙草の煙がもくもくと立ちこめる不健全な場所。オールド・トラッフォードの正面スタンド階下にあるトンネル付近を歩けば、その暗闇にはいかにも人相の悪そうな人が、なんとも言えない視線を投げかけてくるのだった。スタジアムの売店で買ったチーズバーガーをひと口、口にした瞬間、口内に石油のような臭みが広がったことを覚えている。

 だが、スタジアムが健全な娯楽施設になればなるほど、かつて漂っていた殺気は薄まっていった。熱烈なファンが占める割合が100%でなくなったことと、それは大きな関係がある。観光客というお客さんの割合が増せば増すほど熱は下がる。スタンドが大きくなりすぎてしまったことで消えてしまったものが垣間見える。

 イングランドが開催したユーロ1996では、準決勝のフランス対チェコをはじめ5試合を行なっている。また、UEFA選定のカテゴリー4のスタジアムとして、チャンピオンズリーグ(CL)決勝も開催している。2003-04シーズンのミラン対ユベントス。イタリア勢同士で初めて決勝を争った一戦だ。

 0-0、延長PKの末にミランがユベントスに勝利した試合だが、こちらの記憶の中では、CL決勝戦の中で最もつまらなかった一戦として刻まれている。CLになって28年。後にも先にも0-0の決勝はこの試合のみだ。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る