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オシムやクライフとは異なるタイプ。
ファーガソンのすごさは観察力だ (4ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

 ファーガソンはグラウンドで練習を指導するコーチでもあったが、伝統的なマネジャーの雰囲気を持っていた。

 ユナイテッドで練習を仕切るのはむしろアシスタント・コーチだった。ブライアン・キッド、スティーブ・マクラーレン、カルロス・ケイロスといった優れた右腕が常にいた。マネジャーとコーチの二人三脚はイングランドの伝統でもある。トレーニングの組み立てと進行をコーチに任せ、ファーガソンは選手たちを注意深く観察していた。

 コーチがトレーニングを主導するのはイングランドに限ったことではなく、たとえばトヨタカップで来日した時(92年と93年)のサンパウロもそうだった。テレ・サンターナ監督はフィールドの周りをゆっくり歩いていただけだ。ただ、戦術を重視する監督はそうではない。

 ヨハン・クライフはバルセロナの選手に混ざって練習していたし、ミランのアリゴ・サッキは、いくつかに分けたグループの重要なパートは陣頭指揮していた。パルチザン・ベオグラードを率いて来日(91年)したイビチャ・オシムも、ミニゲームの主審をやりながらアドバイスを欠かさなかった。

 ファーガソンは、そうした陣頭指揮タイプとは違っていたようだ。

 戦術や技術を直接指導するとなれば、どうしてもそこに集中する。選手にアイデアを伝えるのがメインになるだろう。ファーガソンはもっと全体を把握することに力を注いでいたのだと思う。選手の反応やコンディションなど、一歩引いたところからのほうが見やすい。指導に熱中するのではなく、少し離れた場所から些細な変化も見逃さないようにしていたのではないか。

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