CL史上、最もマジメな得点王。そのフィンランド人は10番の概念も変えた (5ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 身体はバランスよくクルクルと回った。足腰はしっかりしているし、ハンドオフは巧みで、懐も深いので、ゴールを背にするポストプレーも得意にした。高い位置で安定性抜群のプレーを見せた。「10番」と言えばゲームメーカー的だったそれまでの(特に日本における)概念を覆す、サッカーの方向性を示唆するような近代的な10番だった。

 アヤックスにやって来たのは1992-93シーズン。その時、チームにはデニス・ベルカンプがいた。リトマネンに話を聞けば「ベルカンプのプレーを見て学んだ」という。翌シーズン、ベルカンプはインテルへ移籍。リトマネンはベルカンプのポジションにすんなりと収まった。

 ベルカンプとリトマネン。違いを見いだすなら多機能性にある。前者は1トップ下か、2トップの一角がせいぜいだったが、リトマネンは、ダイヤモンド型を成す中盤の4ポジションすべてを難なくこなし、CB、CFとしてもプレーしている。

 アヤックスを率いたファン・ハールは、「戦術的交替」を得意にする監督だったが、リトマネンの多機能性はそれに不可欠となっていた。10番を背負うエースといえば、監督が扱いにくい我が強い選手が多そうだが、リトマネンはその真反対をいく、監督にとって使い勝手のいい選手だった。言われればどのポジションでもプレーした。

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