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絶望した時、奇跡は起きた。
94年W杯で見たロベルト・バッジョの神髄 (5ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO


「これはもうダメだ」と絶望していたその時、奇跡は起きた。

 もちろん、奇跡を起こしたのはバッジョだ。88分、右サイドからのグラウンダークロスに走り込み、何とも優しいキックでナイジェリアゴールにボールを流し込んだのだ。

 絶体絶命のなかで訪れた最大のチャンス、普通であれば思い切り右足を振り抜いてしまうところだろう。しかし、バッジョのシュートはほとんど"パス"だった。

 あるいは、足の痛みからか思い切り蹴れなかっただけなのかもしれない。それでも味方とDFの間を狙った正確なコントロールキックにこそ、バッジョの神髄を見た。

 そこからのバッジョは、神がかっていた。延長では浮き球パスでPKを誘い、自らPKを蹴り込んで決勝ゴールをマーク(このシュートもポストの内側を狙った正確な一撃だった)。準々決勝のスペイン戦でも終了間際に決勝弾。準決勝のブルガリア戦では2ゴールを叩き込み、まさに孤軍奮闘の活躍でイタリアを決勝へと導くのだ。

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