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絶望した時、奇跡は起きた。
94年W杯で見たロベルト・バッジョの神髄 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO


 そして、このイタリア人を形容する「ファンタジスタ」という言葉の響きが何ともハイセンスで、プレーは見たことなくとも、圧倒的なテクニシャンであることは容易に想像できた。

 その選手の名は、ロベルト・バッジョといった。

 それからは常にバッジョの記事を追い、ディアドラのスパイクも買った。さすがに髪型は真似できなかったけど、中学、高校とサッカーに没頭していた筆者にとっての唯一無二のアイドルとなっていた。

 そのバッジョのプレーを存分に堪能できたのが、1994年のアメリカ・ワールドカップだった。

 当時はNHKで放送されていたが、全試合が地上波ではなく、BSで放送された試合も多かった。大学進学のために上京したての頃である。当時住んでいたアパートには当然BSチューナーなどついてなく、ワールドカップを見るために自宅から1時間近くかかる友達の家まで通った。

 もちろん、お目当てはイタリアだ。しかし、優勝候補に挙げられながら、あの時のイタリアはグループステージで苦しんだ。伏兵アイルランドに敗れ、ノルウェーには勝ったものの、メキシコとはドロー。グループ3位でかろうじて決勝トーナメントに駒を進めた。

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