絶望した時、奇跡は起きた。94年W杯で見たロベルト・バッジョの神髄 (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO


 バッジョも精彩を欠いていた。ケガ明けだということは知っていたが、前年にバロンドールを獲得したファンタジスタは、対戦相手から厳しい対応を受け、その能力をなかなか示すことができなかった。

 友だちには「バッジョ全然ダメじゃん。ディノのほうがいいわ」と言われる始末。ディノとは、ディノ・バッジョのこと。「もうひとりのバッジョ」とある種、蔑まれていたこちらのバッジョは、ノルウェー戦で決勝ゴールを決めており、たしかに貢献度は"本家"よりも高かったかもしれない。

 決勝トーナメント1回戦の相手は、ナイジェリアだった。

 アルゼンチンと同居したグループを首位通過した勢いが備わり、圧倒的なフィジカルと"ジェイジェイ"オコチャをはじめ、攻撃陣にタレントが揃う。当時のサッカー界では「アフリカの時代が間もなく来る」なんて力説する識者も数多くいたため、試合前から「イタリア危うし」の声は多かった。

 試合はイタリアが押し気味に進めたが、25分にCKから先制されると、1点を追う後半に切り札として途中からピッチに立ったジャンフランコ・ゾラが不可解な判定で退場となってしまう。頼みのバッジョもナイジェリアのパワフルな対応に苦戦し、後半途中からは足を伸ばすしぐさも見られた。

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