バルサの伝統の結晶であるメッシは、バトンを渡すことができるか (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

「メッシは、山猫、豹、猛禽類......あらゆる猛獣の能力を併せ持ったような選手。人間が戦うには難しい。ようやく対処したとしても、すぐに違う能力を出してくるというか......。1980年代までなら、ディエゴ・マラドーナのように、危険なタックルの標的になっていたはずだよ。まともに戦って止められる選手ではない」

 メッシはラ・マシアという土壌で、自らの技術を日々革新させてきた。身についた習慣が、彼を"進化する怪物"にしたのだろう。試合で強敵と戦うたび、成長することができた。それは特別な変異とも言えるが、ラ・マシアがなかったら存在しない選手でもあるのだ。

 クライフは長大な戦略でラ・マシアを整備していった。同じ哲学で集められた選手を、同じ理念とシステムで戦わせる。すべてが傑出することはない。しかし、信じていたのだろう。

<いつか必ず飛び抜けた選手が出るはずで、その選手がバルサを救うはず!>

 メッシはバルサの結晶であり、救世主だ。

 しかし、アルゼンチンの天才も今年で33歳になる。本人も、残りが長くないことは身に染みているはずだ。はたして、彼はバトンを渡すことができるのか。
(つづく)
 

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