レアルOBのイエロが思う日本の課題。「積極的なミスを褒めよう」 (2ページ目)

  • 栗田シメイ●文・撮影 text&photo by Kurita Shimei

――日本サッカー界に目を向けると、『世界基準のCBがなかなか出てこない』と指摘されることも多いですが、その点についてはいかがですか?

「前提として、世界的にもCBは人材の確保が難しいポジションだ。日本にとっては、体格を含めたフィジカルの問題も無視できない。また、優れた指導者の数という点で、日本は発展途上にあるように思える。

 私個人としては、オフェンスの選手は身体能力を生かして自ずと台頭してくるケースが多いのに対して、CBを育てるためには指導者の力が必要だと考えている。先ほども述べたように、CBには後方からのゲームメイク力、DFの統率を含めたバランス感覚が不可欠で、それは指導者のアドバイスによって補完される部分が大きい。日本はスペインに比べてサッカー文化の歴史も浅いこともあって、そんな指導ができる人材が不足しているのかもしれない。

 スペインを例に挙げると、プロとして生活できる選手は『10万人にひとり』と言われていて、その数字を少しでも高めようと苦心してきたすばらしい指導者が、地方の小さなクラブチームにまで存在する。そんな指導者がいるグループは選手たちのレベルが高く、CBの選手も常に緊張感がある環境で能力を伸ばすことができるんだ」

――具体的に、日本の指導法で改善すべきだと思うところは?

「これは日本サッカー界全体に言えることで、競技の本質についての理解が足りないと感じることがある。日本のサッカーを見ても、選手たちの足元の技術が高いのに対し、体や腕の使い方、へディングの技術が乏しい。

 また、勤勉でルールを守り、組織力が非常に高いのはすばらしいが、試合が予想外の展開になった途端に何をしていいのかわからなくなる場面も目にする。状況の変化に対応する判断力と決断力が足りないんだ。そういったフットボールに必要な根本的な部分をどう伸ばしていくのかを、日本の指導者たちは考えなければいけない」

――今回、サッカークリニックで日本の子どもたちを指導してみて思ったことは?

「ミスを恐れている子どもが多い印象があるね。選手は『ミスして、それを直す』という作業を繰り返すことで成長できる。大切なのは、積極的なミスを褒める指導者がどれだけいるかということ。また、日本でよく行なわれているというドリブルやリフティングの練習については、極端なことを言えばチームでやる必要はないと思っている。単純な1対1の練習もスペインではほとんどやらないよ。なぜなら、試合中に1対1になる局面は少ないからだ。

 1対1を練習でやるなら、守備や攻撃での具体的なシーンを想定して『どのエリアで1対1を行なうべきか』を教えないといけない。そして、試合で直面することが多い3対3や3対4の練習量を増やすべきだ。あとは文化的な側面も影響していると思うが、パッションを試合でいかに表現するか、という点も欠けている部分だと思うよ」

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