武藤嘉紀「勝てばヒーローになれた」と悔やむ。次戦はもっと貪欲に (3ページ目)

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke
  • photo by Getty Images

 ただし、武藤が中盤で引いて守る場面は少なかった。「ボランチの左になってしまったが、ほかの選手から自分に『前へ行ってほしい』と。『前へ行け、前へ行け』と言われて、(中盤は)ボランチふたりに任せて前にいく形になった」と武藤が振り返るように、前線に残ってボールを受けるタスクを託された。ひとり少ない状況ながら、チームとして勝利を積極的に目指した格好だ。

 それでもニューカッスルは劣勢にまわり、昇格組カーディフのフィジカルプレーとロングボール攻撃に苦しんだ。カーディフは球際で激しくボールに寄せ、後方部でボールを持てば190cm・96kgの巨漢FWケネト・ゾホレにロングボールを迷わず放り込む。典型的なイングランドのキック&ラッシュの戦術に、ニューカッスルは押し込まれていった。

 そして武藤も、なかなか前を向いてボールを持てない。最前線に残るFWホセルにロングボールやスローインが入ると、武藤はしきりに相手DFラインの背後に抜ける動きを見せたが、それもチャンスにつながらない。90+4分には右サイドのタッチライン際から抜けようとするも、今度は190cmのDFスレイマン・バンバに体当たりされ、ラインを飛び出して広告ボードと接触した。

「びっくりした。あれだけFWに全部蹴ってくるチームを初めて見た。ブンデスリーガでもあそこまではないので。よりパワフルだった」と、シンプルながらパワフルなカーディフの戦術に武藤も驚いた様子だった。

 それだけに、90+5分のPK獲得は貴重だった。

 武藤が獲得したPKをケネディが決めていれば、ニューカッスルにとって今季初勝利。そして、日本代表FWも勝利の立役者として称賛されていたに違いない。試合後に武藤は、「評価にはつながると思う。これで勝っていたら、自分は点を獲っていないけど、ヒーローになれたと思うので」と唇を噛んだ。

 次節は8月26日、ホームで行なわれる強豪チェルシーとの一戦だ。ここでチームを勝利に導くプレーを示せるか。「FWというのは得点で判断されるので、そこはもっと貪欲にいかなくてはいけない」 と武藤も力を込めていた。

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