ハリルともニシノとも違う、ブラジル全国民が支持する「無敗監督」 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 しかし2016年6月、ドゥンガが解任されてチッチが代表監督に就任すると、その空気は一変した。選手も幸せそうで、サポーターもまたセレソンを評価するようになってきた。

 チッチのやり方は、ドゥンガとは正反対だ。例えばマスコミへの対応。ドゥンガは尊大でメディアとの関係は最悪だったが、チッチは紳士的で、会見でも時間を気にしない。メディアのすべての質問にできるだけ答えようとしてくれる。

 サポーターに対しては、ピッチに入ると真っ先に挨拶をし、ピッチを後にする時は拍手で感謝を伝えた。

 選手に対しては、彼らの人格を最大限にリスペクトし、家族との時間を設け、クラブチームとの兼ね合いを考慮し、何より多くの選手に、セレソンでプレーするチャンスを与えようとしている。

 ドゥンガ時代は代表の滞在するホテルがトップシークレットで、マスコミは完全にシャットアウトされたが、今はオープンでメディアも大歓迎。そのため誰もが代表が何をしているのかを知ることができ、サポーターはチームにより親しみを持てるようになった。

 これらすべてがチッチの仕事である。彼はセレソンに笑顔を取り戻した。それはブラジル人にとって、何よりも、大事な、大事なものなのである。

 彼は最近の6年間で、南米で最も成功した監督だ。代表監督就任前は名門コリンチャンスを率い、ブラジルリーグチャンピオン、サンパウロ州チャンピオン、コパ・リベルタドーレスを制し、そして何より日本で行なわれたクラブW杯でプレミアのチェルシーを破り、全世界のクラブの頂点に立っている。

 チッチが代表監督に就任して以来、ブラジル代表は1試合も負けていない。

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