CLチェルシー対バルサ。コンテ監督の
心理がわかる3人が戦術を読む (3ページ目)
中山 そこで気になるのが、チェルシーのエース、アザールの存在です。前からはめようとした時、彼が前線にいるとそれが機能しなくなってしまう。守備面での働きが期待できないという面が、コンテにとっての悩みの種になりそうです。
小澤 たぶん、そこが穴になるでしょうね。実際、3-5-2でバルサのビルドアップを潰そうとすれば2トップのプレッシングとスライドの繰り返し、ハードワークは必要不可欠な要素ですので、アザールがそれを90分実行できるかというと難しい。バルサ相手に前線でのプレスで1人でも穴になればそこから見事にはがされて、簡単に自陣ゴール前まで運ばれてしまいます。
しかも、今季のバルサは試合の入り、前半にうまく機能しなかったとしても、後半に巻き返せるだけの力をラ・リーガの試合でみせています。エルネスト・バルベルデ監督は、前半の戦いを見てハーフタイムや後半の早い時間帯で交代カードを切りながら修正を加えて、戦況を大きく変える手腕を披露しています。チェルシーが前半からハイプレスを実行してそれをうまく機能させてきたとしても、その対応策を即座に、効果的に打つ監督の采配力が今季のバルサにはありますし、戦術バリエーションを持つだけの選手層の厚みも持っています。
倉敷 僕は、ビクター・モーゼスとマルコス・アロンソのところが気になります。バルサ両サイドのコンビネーションはとても良いですし、この2人はそれほど1対1に強いというイメージはない。では、バルサのジョルディ・アルバとセルジ・ロベルトに対し、ウィリアンやアザールが前線から守備のための圧力をかけ続けられるかというと、それも望めそうにないでしょう。
では、どう打開するか? キエッリーニが言うにはユベントス時代には選手が倒れるほど厳しい練習をさせていたコンテですから、過密日程のプレミアでも、できる限りのアイデアや戦術を選手に落とす練習時間が欲しいでしょうね。
中山 今季のチェルシーは、1トップのモラタの下にアザールとペドロ、もしくはウィリアンをシャドーにした3-4-2-1のパターンと、エンゴロ・カンテをアンカーにして、モラタとアザールを2トップにした3-1-4-2のパターンを使い分けていますが、対バルサを考えた時にコンテがどっちを採用するかが、興味深いですね。
僕は、押し込まれることを前提にして、完全な5バックと中盤3人の計8人で重心を低くして守って、ロングカウンターを狙う戦略もアリだと思っています。バルサの両サイドバックに関しては、カンテ、バカヨコ、セスク、あるいはドリンクウォーターを並べてケアしながら、ボールを奪ったら前線のアザールかモラタに預けてカウンターを狙うというかたちです。場合によっては、干され気味のダビド・ルイスを中盤に入れて、カンテとバカヨコをその両脇で固めるという極端な戦い方もあるかもしれません。
特に最近のチェルシーは守備が連動せず脆さを見せるシーンが多いですし、コンテがそういった奇策を考えても不思議ではありません。
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