乾貴士がカンプ・ノウで見せたリアルな夢。バルサが震えた2ゴール (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Getty Images

 枠に飛んでくることを予想していなかったGKテア・シュテーゲンの反応は遅れ、ボールはバーを叩いてネットに吸い込まれていった。

 それは奇しくもカンプ・ノウの人々が、クリスティアーノ・ロナウドのマラガ戦での得点をラジオやスマートフォンを通して知った直後の失点であり、伏兵の一撃によって10万人収容のスタジアムが一瞬、沈黙に包まれた。

 さらに61分、中央でセルゲイ・エンリヒが右足でフリーの乾にボールをつなげると、走り込んだエイバルの背番号8番は迷いなく左足を振り抜き、バーに当てながらもゴール左隅に突き刺した。リーガ優勝に一縷(いちる)の望みをつないでいたバルセロナサポーターの思いを完全に断ち切る一撃だった。カンプ・ノウ記者席では世界中のバルセロナ番記者から日本人記者に「どうなってんだ」と言わんばかりの視線や身振りが飛んできた。

 その直後、エイバルはオウンゴールで1点を献上するが、ジョルディ・アルバが接触することなく自ら転んで得たPKをリオネル・メッシが外してしまう。流れはエイバルにあるかと思われた。日本人のゴールで、欧州サッカーの頂点に君臨するチームを粉砕するという夢が現実になるのではないかという期待感が膨らんだ。

 だが、バルセロナはやはりバルセロナ。そうは問屋がおろさなかった。

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