鈴木大輔が語る、スペイン2部リーグの現場で何が起きているのか (6ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

 試合後の鈴木は生まれつきの快活さで語っていが、苦戦は必定だった。

 そして迎えた第2戦。ナスティックは1-0と先制に成功し、 一気に逆転のボルテージを沸騰させる。大歓声を背に、優位に試合を進めた。ところが、セットプレーのクイックスタートに虚を突かれる形で、1-1と同点に される。これで敵に落ち着きを与え、むしろチームは焦りを募らせた。そして後半早い時間、ショートカウンターで2失点目を喫すると、(5点以上が必要とな り)ほぼ決着はついた。

 結局、ナスティックは第2戦も2-3で敗れている。合計スコアは3-6。望んでいたプレーオフ決勝には進めなかっ た。2試合で6失点が重く響いた。リーグ戦では鈴木がセンターバックに定着して以来、9試合5失点。予想外の守備の瓦解だった。さらに言えば、6失点中4 点がセットプレーから。敵の独壇場で、課題も顕著に出た。

「負けたわけだし、失点が多かったこともディフェンダーとしては悔しい。でも、お互い球際で激しく戦い、誇らしくプレーできたな、とも思います。昇格という結果は出なかったですが、打ち合って負けた結果。恥ずかしい戦いはしていない」

 鈴木は毅然と語ったが、同時に後悔も湧いてくる。

「やっぱり、もう1試合、戦いたかったですけど」

 テレビ画面から視線を動かさずに呟いた。

「このヒリヒリした戦いを続けたかった。ナスティックはすごくいいチームで、能力の高い選手ばかりだったから。一緒に昇格して1部で戦いたかった。でも、そうならなかったのも含めてサッカーで」

 テレビでは、セットプレーから失点した1点目が再生されていた。彼はそれを巻き戻し、両目に焼き付けた。
(つづく)

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