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それでもドルトムントが香川真司を忘れない理由 (3ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei
  • photo by GettyImages

 ただし、意外なことに香川復帰論はドイツメディアからは全くと言っていいほど出てきていない。今年7月に日本のテレビ番組内での「いつか帰りたい」という発言をビルト紙が報じたことがあったが、それ以降、香川待望論はほぼドイツから発信されていない。

 なぜドイツからではなく、イギリスからそうした報道が出てくるのか。一つは香川の不調だろう。ドルトムントから鳴り物入りでマンチェスター入りした香川だが、移籍1年目から思うような結果を残すことができず、監督が変わった今季はなかなか出場機会が得られずにいる。香川が周囲を黙らせる活躍を見せていれば、こうした話題は上がってすらこないはずだ。

 二つ目はドルトムントの相変わらずの好調ぶりだ。国内ではバイエルンと首位争いを演じ、CLでもグループリーグ首位に立っている。現状のメンバーで結果が出ている以上、補強を望む話は出てこない。イギリスから香川の不遇を憂う声は上がっても、ドイツから香川を求める理由は見当たらないのだ。

 また、もし香川がドルトムントに戻ってきたとして、スタメンの座が用意されているわけではない。香川の移籍後、ドルトムントの戦力は底上げされている。現在のドルトムントは攻撃的な中盤のポジションに2チーム組めるほどの戦力を抱え、トップ下ではクラブ史上最高額となる2750万ユーロ(約35億円)で加入したムヒタリアンが期待に添う活躍を見せている。いくらクロップ監督の寵愛を受ける香川とは言え、ここに割って入るのは容易ではない。

 それでもドルトムントが香川を欲する理由はある。今季のドルトムントは、香川が在籍した時と同様、豊富な運動量で相手を圧倒する、テンションの高いサッカーを繰り広げている。このサッカーでは選手の消耗が激しく、国内は制覇してもCLとの両立を達成できない。CLとの両立を目指した昨季は、ペースを落として選手の消耗を防ぐ戦い方を導入した。その結果、意気込んで臨んだCLでは躍進したが、国内では取りこぼしが目立つことになった。

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