ロベルト・バッジョが難病と闘った友に送った手紙 (3ページ目)
こうして互いの物理的な距離は遠ざかってしまったが、堅い絆で結ばれた友情が途切れることはなく、それは「最期」まで少しも変わることがなかった。バッジョは、病と闘うボルゴノーボを支え続けた。ふたりは「B2」であり続けたのである。
今年6月27日、ボルゴノーボは必死に目を動かしては“重度障害者用の意思伝達装置”でメールを書いた。『君たちが勇敢に闘う姿を心待ちにしている』『心からサッカーを楽しんでもらいたい』と、コンフェデレーションズカップに出場しているイタリア代表のメンバーへメッセージを送ったのだ。
しかし、ボルゴノーボは心の底から楽しみにしていたイタリア対スペインを見ることなく目を閉じ、天に召されていった。享年49──。
コンフェデで、イタリアがスペインに善戦するも敗れた試合、イタリア代表選手が黒い喪章を腕につけていたことをご記憶だろうか。イタリア代表はボルゴノーボが彼らに託したメッセージに応えるべく戦っていたのである。
2010年にボルゴノーボは自伝を出版。その発表会見にはバッジョはもちろん、 マルディーニやバレージのほか、リッピらイタリアサッカー界の重鎮も顔をそろえた 我が家には、80年代後期のフィオレンティーナの名場面を集めた古いVHSのビデオテープがある。映像はノイズだらけ。しかし、そこにあるのはまさに何とも言えぬほどに美しいサッカーの連続だ。ソクラテスやラモン・ディアスが渋い技を連発し、パサレラやドゥンガが躍動し、“星を見ながらプレイする”と言われたジャンカルロ・アントニョーニは文字通り華麗を極めている。
そして若き日のロベルト・バッジョが、ナポリのマラドーナとの対決で華麗な技を繰り出して観客を魅了すると、次の映像では、バッジョの隣に、実に柔らくしなやかな動きで前線を走るボルゴノーボがいる。
「美しいサッカーは永遠に色褪せることがない」
ロベルト・バッジョは、ボルゴノーボのこの言葉を今も胸に刻んでいるはずだ。
バッジョの友への手紙は、こう結ばれている。
「走る君にアシストを送ることこそが、僕の最高の喜びだった。僕のパスを受けてゴールを決めて歓喜する君を見るのが、最高に嬉しい瞬間だった。
チャオ、ステファノ。もう闘わなくていい。ゆっくりと休みなよ――」
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