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【EURO】ポルトガルに完敗。優勝候補オランダはなぜ崩壊したのか (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • 原悦生●写真 photo by Hara Etsuo

 それでも11分、この日初先発したファン・デル・ファールトの左足シュートで先制。この時点ではドイツがデンマークをリードしており(後に追いつかれ、最後は2-1で勝ち越した)、希望が見えた。だがその5分後にはロナウドのシュートでピンチとなり、さらにその1分後、ボランチとパス交換をしていたファン・デル・ウィールが痛恨のバックパスミスをし、ポステガにシュートを許す。これは枠の左へと反れるが、オランダは大きくリズムを崩してしまう。結局、18分にはロナウドのゴールで追いつかれた。

 試合後、ファン・マルバイクは、先制点をあげた直後のシーンをこの日の敗因の筆頭に挙げた。記者会見の冒頭、「試合の入りはとても良かったが、あそこからリズムを崩した」「ひとつのミスがポルトガルを試合に引き戻してしまった」とまで言った。しかしこれはあくまで前半の出来事。前半は同点で折り返しているのだから、ハーフタイムにも修正は可能だったはずだ。

 だが後半の選手交代も失敗に終わった。後半22分、オランダは左SBのビレムスに代え、FW登録のアフェライを投入する。ファン・マルバイク監督は「2点差をつけて勝つためにリスクを負った」と説明するが、最終ラインは、左サイドバックを欠いた右寄りの3バックになり、 ゴール前にはフンテラールとファン・ペルシー、左にスナイデルとロッベンが張り、右にアフェライ、中央ではファン・デル・ファールトが高めに陣取る、不可思議な布陣となった。もちろんこの急造システムが機能するわけはなく、後半29分にはあっさりとロナウドにこの日2点目のゴールを決められ、これでグループリーグの行方は決した。

 準優勝した南アW杯から2年。ほぼ変わらぬメンバー、スタッフで戦ってきたため、オランダはこのユーロでも優勝候補の筆頭に挙げられた。だが結局、力を何ら発揮することなく大会を去ることになった。

 ビッグネームが個の力で打開しようとするものの、そこには連携も戦術もなく、チーム内外で指揮官の求心力不足も露呈した。さらにその豪華攻撃陣も、円熟期とは言われるものの、メンバー構成にはマンネリ感がつきまとう。

「敗退の責任は私にある」と語った指揮官については、早くも辞任を求める声が上がっている。今回は18歳のビレムスが抜擢されたが、20代前半で国際経験豊かな選手の出現も必要だろう。2年後のブラジルW杯で上位進出を目標とするのであれば、なすべきことは少なくない。

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